金永會の万葉集イヤギ 第82回

歌聖 柿本人麻呂(万葉集の高峯峻嶺の秘密)
日付: 2026年02月25日 11時03分

 狹岑嶋は今の香川県坂出市である。讃岐国狹岑嶋に伝染病が猖獗し人口の半数が死ぬ惨状が起きていた。皇室は死者たちのため涙歌を作るようにと、柿本人麻呂を派遣した。涙歌を作るためには死者の生前の業績が必要だ。ところが、讃岐国はそれらを知らせなかった。柿本人麻呂はこれを激しく非難している。
このことが禍となり、彼は死罪となる。
そのときは、柿本人麻呂を後見人とした持統天皇はすでに亡くなり元明天皇の治世だった。彼を庇護する人がいなかった。

223番歌を解読する
鴨が山へ向かうよ。ためらいながら進む。私は紙を巻いているね。
(※柿本人麻呂は死を前にしている。紙を巻くとは、この作品を最後に、歌を作らないという意味だ)
私は鴨に生前の業績を教えない。
世事に疎い妻が、私を長く待ちはしないはずだ。

柿本人麻呂が讃岐国を謗ったのが問題となった。彼は故郷の石見国へ送られ、そこで死を迎えた。223番歌は人麻呂が死を迎えて詠んだ作品だ。辞世の歌である。
鴨は柿本人麻呂、つまり自分の魂だ。
彼が処刑されたのは、妻が亡くなってからさほど長い時間が経なかったと思われる。それで、妻が自分を長くは待たないといったのだ。

225番歌を解読する。
冥土の使者と張り合ったが、勝てなかったよ。
石見国の川に雲が垂れ込めているが、水を渡っていくね。
(※雲が垂れていれば天気が悪く海に風波が立つから、あの世の海へと発ってはならない)
束の間見えるね。柿本人麻呂の霊魂を冥土の使者が引きずって行くのが。

柿本人麻呂の死後、依羅娘子が詠んだ涙歌だ。藤原京で務めたとき人麻呂と結ばれた女人だろう。現在、高角山の遺跡には柿本人麻呂と依羅娘子、二人の像がある。夫婦像となっているが誤りだろう。人麻呂の妻は故郷の村で暮らし人麻呂より先に亡くなった。

 歌聖 柿本人麻呂(万葉集の高峯峻嶺の秘密)                    <続く>


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