いま麹町から 69 髙木健一

サ条約11条ー「裁判を受諾」し、賠償義務へ
日付: 2026年02月10日 09時57分

 1952年4月28日に発効したサンフランシスコ平和条約は日本が独立するに至った重要な条約です。
その第4条で日本が義務付けられた「特別取極」については、既に述べました(「いま麹町から」 第4回)。さらに、サ条約11条にいう東京裁判の「受け入れ」についても指摘しました(同 第57回)。
その際も述べたように日本国が受け入れたのは東京裁判の判決の主文(Sentence、刑期など)だけではありません。判決文に示された「裁判所の設立、審理、根拠、事実認識、起訴状の認定、判決、刑の宣告」の全てが裁判(Judgements)に含まれているのです。
ところが、靖国神社(ホームページ)は、「Judgements」を「判決」と訳し、日本が受諾したのは刑の執行だけと狭く解釈する考え方をとっているようなのです。
それなら「Sentence」とするべきです。「Judgements」とは、事実認識を含んだ訴訟手続と結果の全てであり、これを「受諾」したものとするほかないのです。先の大戦は日本がアジア民族の解放のために立ち上がったのであり、侵略戦争ではないと信じたい人がまだいるのは驚くべきことです。
日本はカイロ宣言、ポツダム宣言を受諾し、無条件降伏をした上、極東国際軍事裁判を経て、サンフランシスコ平和条約11条でその裁判をも受諾したのです。これを後になって「この判決に書かれていることは受け入れられない」と言える筋合いではないのです。
このサ条約は52カ国が参加した講和会議で締結されました。しかし、ソ連と中国(中華民国と中華人民共和国)、インドとビルマは不参加でした。
さらに大韓民国は参加を要求したのですが、第二次世界大戦時には韓国は存在していないとされました。上海に大韓民国臨時政府が存在したというのですが、この政府を承認した国は存在しません。もちろんその政府指揮下の軍隊もなく、まして日本国と交戦した事実もないとしてサンフランシスコ講和会議に招請されなかったのです。但し、朝鮮(韓国)は、独立を承認された第2条と上記の「特別取極」の第4条の利益を受ける権利を有することが認められています(21条)。
いずれにせよ、日本の軍隊によって被害を受けた中国・韓国(北朝鮮も)・ソ連・インド・ビルマなどを欠いたままの講和会議では、極めて不十分なのです。
この平和条約に続いて、日本とアメリカの間で締結された日米安保条約によって、引き続きアメリカ軍が駐留・駐屯することになったことが重要なのです。
サンフランシスコ平和条約は上記のように問題はありつつも日本がこの条約によって独立を果たしたことは事実です。
従って、この条約で義務付けられたことは国際公約として実行しなければなりません。第4条の「特別取極」義務もその一つですが、第11条で定める極東軍事裁判所による「連合国戦争犯罪法の裁判を受諾し」たことの意味を考えるべきだと思います。
これにより、日本が戦争中、数多くの戦争犯罪を犯し、中国をはじめ、アジアの人々に多大の被害を与えた事実が認定され、その事実を日本国が「受諾」し、承認しているのです。
この条約では「日本国は戦争中に生じさせた損害及び苦痛に対して、連合国に賠償を支払うべき」だと確認されています(14条)。
私の求める戦後補償とは、この「戦争中に生じさせた損害及び苦痛」の被害者個人に対して、日本国が直接償いをすることなのです。


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