在日本大韓民国青年会中央本部(李将浩会長)は公式ホームページ上で14日、「在日韓国人青年生活史調査中間報告書」を公開(監修:木下佳人)、15人の在日青年たちの等身大の語りを綴る資料として、専門家から現代的なアイデンティティーの在り方を示すものと評価された。一方で、かつて「韓青」「韓学同」といった反国家勢力による浸透工作と対峙、命がけで組織の正統性を守り抜いた「韓民自青」の闘いを知る世代からは、懸念の声が漏れている。
朝青・韓青への〝白旗〟懸念
青年会中央本部が公開した「在日韓国青年生活史調査中間報告書」は、青年会会員15人へのインタビュー記録が綴られた資料。「調査概要」「生活史の記述」「考察」「結論」の4章構成からなり、李将浩会長による序文と補論が付され、その全文がインターネット上に公開されている。
金泰泳・東洋大学社会学部教授は、「変化し続けるアイデンティティーを丁寧に描き出した」と学術的意義を高く評価する。若手の同胞青年たちが抱く「生きづらさ」を可視化した点は成果の一つと言えるだろう。
本紙が注視するのは、報告書全体を貫く「政治性」の忌避と「交流」の純化への偏重だ。監修を務めた木下佳人氏は、「公式的な立場からあえて距離をとって在日青年のリアルを捉えようとした」と説明する。だが、この「生活史」という心地よい枠組みは、かつて在日青年たちが組織活動を通じて背負った「民族団体使命」を喪失させていないだろうか。
■在日青年組織の使命とは
かつて過酷な学生運動の渦中を体験した在日2世の玄善允さんは、その経験を「韓国政府から20年以上にわたって旅券発給を拒否されるなど、人生に大きな足かせがつけられた歩み」だったと回想する。玄さんにとって、組織に集うとは単なる共感ではなく、「裏に蠢めくもの、意識に上らせることができなかったことどもとの格闘」だった。
本報告書に並ぶ「交流」を綴った文字列からは、国家暴力や構造的差別と地続きであった、かつての在日青年たちが抱いた緊張感などは読み取れない。これは現代的な適応に見える一方、在日という存在がかつて誇りにしていた、権力への抵抗拠点としての精神史をも放棄してしまうプロセスに映る。
組織内部からも異論の声が上がる。金直哉・青年会愛知県本部会長は、「在日同士の交流の場として組織が作られたのか。根本が変わってしまうのは悲しいことだ。存在意義を主張するためにはもっとやるべきことがある」とし、歴史的使命の継承を訴える。
過ぎた「交流」の強調は、組織の存在意義を民族のアイデンティティーと直結させて活動している、朝総連傘下の「朝青」や韓統連傘下の「韓青」など、横並びの敵性団体と対比した時、自ら武装解除を宣言してしまっているように映る。
■来年結成50周年のために
青年会中央本部が結成された1977年の当時、その組織的な根底には、「韓民自青」が繰り広げた〝反国家勢力から在日同胞社会を守る〟という不退転の意志があった。現在の青年会がその後継組織であり続けるならば、「交流」団体への純化はかえってアイデンティティーを毀損する結果を招致しかねないのではなかろうか。
今回の報告書を組織内部的な「自己満足」に終わらせず、その「居心地の良さ」のルーツがいかなる理念から沸き上がったのか。団体の前史への配慮、当事者たちの声に耳を澄ませる努力などを進め、今回の「中間報告」を補う視野が獲得されていくことに期待を寄せたい。
一方で、在日3世の姜晴希・一般社団法人「マンナミー」代表理事は、若手の在日同胞としての立場から報告書に対して光を当てる。姜代表理事は、「政治的な評価や誘導を行わず、丁寧に声を拾い上げたこの資料集には大きな価値がある」とし、「現代の青年にとって重要なのは”正しさ”の押し付けではなく一人ひとりが自分なりの形で『在日らしく』生きられる選択肢を増やすこと」と語る。
様々な視座が交錯する中で、崔榮太・青年会千葉県本部会長は、「交流団体化する現状は防ぎようがない。理念の前に、まずは語学などルーツから学んでいくべきではないか」と切実な課題を挙げる。また、李将浩・青年会中央本部会長は、「本調査は組織として何を変え、何を守るべきかを問い直す試みでもある。今後の調査を通じて、存在意義を再確認していきたい」と決意を述べた。
「交流」を内輪の楽しみに終わらせるのか、それとも新たな時代の「在日コミュニティーの盾」を再構築する礎とするのか。
結成50周年を来年に控え、守り続けてきた正体性のバトンは、今まさに「生活」という名の激流の中で試されている。
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14日、青年会HPに公開された「在日韓国人青年生活史調査中間報告書」表紙。全文の入手は以下のURL参照(
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