AI人材教育機関設立へ

最先端半導体設計者を養成
日付: 2025年12月15日 12時00分

 韓国政府とソフトバンクグループ(SBG)子会社の英半導体設計アーム・ホールディングス(ARM)は、韓国国内にAI人材育成教育機関を設立する。今後到来する次世代技術である「人工超知能(ASI)」に対応し、韓国政府が掲げる「AI3大強国」実現のため、最先端の半導体設計者養成に乗り出す。
李在明大統領とSBGの孫正義会長兼社長が5日、ソウルの大統領府で会談し、覚書(MOU)を締結した。会談にはアームのレネ・ハース最高経営責任者(CEO)も同席した。アームは世界最大の半導体設計会社でモバイル向け設計を事実上独占している。
設立するのは半導体設計に特化した養成機関で、相対的に韓国の弱点とされるシステム半導体と自社工場を持たず委託生産する「ファブレス」分野を強化するのに役立てる。光州科学技術院(GIST)を候補地として検討中。2030年までに1400人の育成を目標としている。
AI人材養成教育機関の設立は、関連人材の海外流出が懸念されることから、人材輩出に寄与すると期待されている。
韓国銀行の報告書「AI専門人材の現状と需給不均衡」によると、韓国のAI人材のうち海外勤務者の割合は約16%で、他分野と比べて約6ポイント高かった。海外で勤務する韓国人AI人材は10年には約4000人だったが、24年には1万1000人と大幅に増加している。
また韓国は、AI技能人材が、そうでない人材と比べてどれくらい高い給与を得ているかを示す「賃金プレミアム」が主要国と比較して著しく低い。
韓国のAI人材に対する賃金プレミアムは約6%となっている。これは米国の25%の4分の1でしかない。ほかにカナダが18%、英国、フランス、オーストラリアがそれぞれ15%であり、大幅に低い水準に抑え込まれている。
日本との半導体関連産業協力については、23年3月の韓日首脳会談以降の関係正常化に伴い、日本が韓国への半導体材料3品目の輸出管理厳格化措置を緩和するなど、両国企業間の取引が円滑化している。
サムスン電子は供給網(サプライチェーン)の安定化と車載半導体事業の拡大のため、日本企業との協力を強化している。ソニーの経営陣がサムスンの工場を訪問し、車載用メモリーやディスプレイ分野での協業の可能性を議論した事例もある。
韓国政府は米中に並ぶ「AI3大強国」に入る目標を掲げている。
李大統領は10月に訪韓した米オープンAIのサム・アルトマンCEO、米半導体大手エヌビディアのジェンスン・ファンCEOの両トップとも会談。データセンター構築や人材育成、先端半導体開発などで韓国企業と協業する約束を取り付けていた。


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