今年6月に行われた「第9回仙台国際音楽コンクール」でヴァイオリン部門の最高位に輝いたムン・ボハ(文普厦)さん。2006年に韓国で生まれ、中学2年生の頃に父親の仕事の事情で韓国を離れた。残りの中高生時代はプラハで過ごし、23年から米国の音楽の名門・カーティス音楽院で学んでいる。そんなムン・ボハさんが16日、都内で新日本フィルハーモニー交響楽団が開催した特別演奏会”新しい風”チャリティーコンサートで独奏を務めた。公演に先立つ13日、ムン・ボハさんに話を伺った。
―このたび演奏したチャイコフスキーについて
「温かみのある曲なので、仙台以来の日本で初めての観客となる皆さんに、親しみを持って聞いてもらえれば」
―韓国と海外での暮らしが人生の半分ほどとなっている自身のアイデンティティーについて
「外国で暮らし、その国で幸せを感じながら暮らすことが容易でないことを経験している。在日同胞の皆さんが基盤をつくり上げ、これまで生活してきたことは凄いことだと感じている」
―最後に本紙の読者の皆さんにメッセージを
「私も外国の地で夢を持ちながら、良い演奏のため研鑽を続けている。他国で暮らしながら自国の文化も大事にして生きていく幸せを、私の演奏を通じて共感してもらいたい」
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会場となったすみだトリフォニーホールには、小学生からシニアまで幅広い年代層の観客が集まり、ムン・ボハさんの出身地である韓国から駆けつけた人々の姿もあった。
公演のために11日から訪日していたが、観光などには時間を割かず、ほぼ全ての時間を昼夜なく練習の時間に当てていたそうだ。飲食の面では「日本の食事は、自分の口にとても合うように感じる」とした。このたびの公演を終えてから次の機会までの約2週間は、久しぶりに韓国で家族水入らずの時間を過ごすとし、公演も楽しみに韓国に一時帰国できる喜びがあると語った。
ムン・ボハさんは来月5日(金)、都内の浜離宮朝日ホールで夜7時から、仙台国際音楽コンクールの最高位受賞を記念したソロ演奏会を開く(チケットは現在発売中)。
16日、新日本フィルハーモニー交響楽団の特別演奏会でチャイコフスキーの協奏曲を演奏するムン・ボハさん©TERASHI Masahiko