編集余話

日付: 2025年11月18日 09時23分

 韓国与党・共に民主党の議員らが、特定の国や民族を侮辱した場合に懲役刑を科す法案を準備している。最長5年の懲役を想定。学校周辺でのヘイトスピーチや関連横断幕の設置も禁止する別法案も進められている▼近年、世界的にポリティカル・コレクトネスが拡大し、言葉狩りが深刻化している。欧米では「不適切な表現」で大学教授が解雇されたり、SNS投稿で社会的制裁を受けたりする事例が続出。韓国でもこの流れが波及し、言論の自由が縮小する兆候が見られている▼ヘイトスピーチは、社会の分断を招くため規制の議論は理解できるが、基準の曖昧さは恣意的な運用を招きやすい。韓国の憲法は表現の自由と集会の自由を明確に保障している。発言や集会を理由に刑罰を科すのは、過度な規制と言わざるを得ない▼特に今回の法案は事実上の「中国侮辱禁止法」だ。法案提出議員は「最近の嫌中デモで、中国介入の不正選挙を主張する虚偽発言が横行している」とし、嫌中感情の高まりに対しての懸念を示した。だが、ソウル中心街で頻繁に繰り広げられる民労総の「反米デモ」は放置する一方、嫌中を口実に懲役刑を科そうとするダブルスタンダードは、親中姿勢の露骨な表れではないか。法曹界からも違憲だとの批判が聞こえる▼暴力的なデモは現行法で十分対処可能だ。ポリコレの名の下に表現の自由を犠牲にし、特定国への批判を封じる法案は、民主主義の後退を招く。ヘイトスピーチを抑止しつつ、自由を確保するバランスが求められる。


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