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米国、日本への外交姿勢
日付: 2025年11月11日 11時07分

 今回は、韓国の、米国、日本に対する外交姿勢について概観してみたい。韓国のしたたかな側面、強さが窺い知れる。

[米韓関係]

米国のトランプ大統領と韓国の李在明大統領は10月29日、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議が開かれた韓国・慶州で会談した。米韓両首脳は総投資額3500億ドルのうち2000億ドルを現金出資で投資することに合意したとしている。
「商業的合理性のあるプロジェクトのみを推進する」という合意があるだけで、米国の「善意」に頼る構造であるという指摘も聞かれるが、きちんと交渉し、米国を押し戻している点は評価されている。
こうした上で、トランプ大統領は韓国による対米投資などの見返りに、原子力潜水艦の建造を承認したと明らかにしている。核兵器ではなく通常兵器を備えた原潜になる見通しで、米韓両政府は米国内での建造に向けた協議を本格化させるとしている。トランプ大統領はさらに韓国の原潜が米国ペンシルベニア州フィラデルフィアで建造されるとの見通しも示している。韓国としては、しっかりとした見返りも一応得た形である。
こうして、韓国産業界では対米輸出市場で最大の悪材が解消されたという評価をしている。
さて、韓国は産官学金融、力を合わせて「防衛産業」の輸入代替化国産化の推進による技術力拡大と自力国防力強化そして、輸出産業化推進による外貨獲得産業化をきっちりと進めてきた国と言える。また、ウクライナ紛争以降は、防衛装備品を必要とする「ポーランドへの韓国防衛装備品輸出」も実現し、韓国の防衛産業が世界からも大いに注目されるようになり、防衛装備品の国際展示会でも注目されるようになってきている。
さらに、トランプ大統領は世界各国、とくに同盟国に対して「中国本土に造船の発注をするな」との圧力を掛けていることもあり、韓国の外貨獲得産業の一つである造船産業にとってはビジネスチャンスを生かすため、米国海軍との取引チャンスを模索し始めていた。韓国は既に米国海軍との取引がある豪州のオースタルという企業を買収してまでも米国海軍とのビジネスを達成し、世界の造船業界にもっともっと深くコミットしていくことを画策していた。
したたかな韓国のビジネスマン達の動きが、上述したようにトランプ大統領に認められたとも言えよう。

[日韓関係]

韓国の主要経済団体の一つである大韓商工会議所の崔泰源会長(SKグループ会長でもある)は、日本との経済連帯の必要性を強調している。崔会長は「米国の関税政策により60年代から続いてきた輸出中心の経済成長モデルが通用しなくなった。日本と協力すれば6兆ドル規模の市場を創出でき、規模の経済を作り出すことが出来る」と語っている。
米国の関税政策と国際秩序の急変により数十年間続いてきた輸出主導型の経済モデルが現在の貿易秩序で機能するのは難しいとの指摘をしたのである。かねてから崔会長は日韓経済連帯の重要性を説いており、筆者もそうした動きを経験から認識している。
日韓両国が世界4位の規模の経済ブロックを形成することで、保護貿易主義などに対抗することができると主張している。崔会長は世界経済のルールを決める国の1位は米国で、2位が中国本土、3位が欧州連合(EU)とし、韓国は決められたルールに従うしかないとも指摘、一国では国際秩序やルールを変えることが出来ないので、連帯するパートナーが必要であると主張してきた人物である。日本のビジネス界側に同様の考えがあるのかどうかがポイントとなる。
以上、少しでもご参考になれば幸いである。
(嘉悦大学副学長、愛知淑徳大学名誉教授 真田幸光)


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