ドラマと文学で探る韓国22

『ONE:ハイスクール・ヒーローズ』×『ボンジュール・トゥール』①
日付: 2025年11月05日 11時54分

 今回から3回にわたって、友情をテーマとした小説とドラマを取り上げようと思う。小説はハン・ユンソブの2010年の作品で、第11回文学トンネ児童文学賞大賞受賞作の『ボンジュール・トゥール』、ドラマは6500万ビューを超える大人気ウェブトゥーンが原作の『ONE:ハイスクール・ヒーローズ』(25)を選んでみた。両者は並べて言及するにはかなり毛色の違う作品同士ではあるが、根底に流れる登場人物の思いには共通点が見出せる。それは他者との出会いと共感だ。
『ボンジュール・トゥール』の主人公ボンジュは、お父さんの仕事でフランスにやって来た12歳の韓国人少年だ。当初はパリで暮らしていたが、その後、トゥールという美しい田舎町へと引っ越してくる。韓国の在外同胞庁の23年度の統計によると、海外で暮らす韓国人は約700万人、うちフランスに住んでいるのはおよそ2万人で、海外居住者の多い順から15番目となっている。ちなみに日本人はというと、外務省の24年の統計によれば海外で暮らす日本人は130万人に満たない。その中で、在仏日本人はおよそ3万7000人だという。日韓とも、圧倒的に多いのはアメリカ在住者だ。
すでに数年間フランスに暮らしているボンジュは、現地の人との意思疎通には事欠かない。だが彼のお母さんは日常会話こそ問題ないが、細かなことになると、ボンジュを頼った。語学の習得はやはり子どもにはかなわない。そんな彼が学校で出会うのは日本人の少年トシだった。ボンジュはどこかミステリアスなトシが気になって仕方がない。だがトシの方はボンジュに特に関心を示さず、そっけない態度を取るばかりだった。一方、ボンジュにはもうひとつ気になって仕方のないことがあった。部屋に備え付けられた机の落書きだ。越してきた日に見つけたその落書きも、ボンジュの好奇心を大いに刺激した。
ドラマ『ONE:ハイスクール・ヒーローズ』の主人公は高校一年生のウィギョム。エリート校でトップの成績を誇っていた彼が転校して来るところからストーリーが始まる。優等生には縁のない転校先で、好奇の目にさらされるウィギョムだが、本人はまったく意に介さない。彼には医学部進学を強要し、進学塾での成績を逐一チェックする父親の存在が重くのしかかっていた。教室では不良に絡まれる生徒がいた。だがウィギョムはヘッドホンをして騒音を遮断する。ところが、不良の一人が彼の古びたオーディオプレイヤーに触れた瞬間、ウィギョムの態度が一変する。暴力とは縁のなかったはずの彼が、あふれる怒りを爆発させるかのごとく、相手に突進していく。あっけに取られる周囲をよそにウィギョムのこぶしは止まるところを知らない。そんな彼を興味深げに眺める生徒がいた。同じクラスのユンギだった。不敵な笑みを浮かべながら、明日から何が起こるか、と忠告ともしれない言葉を投げかけるユンギだが、進学塾の時間に送れそうなウィギョムは無視して学校をあとにする。
ボンジュとトシ、ウィギョムとユンギ。転校生と在校生の間ではさまざまな葛藤や思惑、すれ違いが生じる。彼らが暮らしてきたバックグラウンドもまた、彼らの関係性に暗い影を落としていく。次回は、大人になる前の彼らが、出会うべくして出会ったともいえる新たな生活を通して、他者との出会いがどんな共感を生み出し、友情へと昇華させるのか、その過程を考察していきたい。


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