高永喆 韓半島モニタリング 第56回

金ヒョンジ疑惑 ニセ政権崩壊への序章
日付: 2025年10月21日 11時55分

 現在、大韓民国を揺るがしている金ヒョンジ疑惑がニセ政権の組織的不正腐敗の核心として指弾され、李在明政権崩壊への序章を開いている。金ヒョンジの正体はベールに包まれており、国政監査出席要求を拒否する隠ぺいが李政権の正当性を根底から揺るがしている。

◇30年間不正腐敗の核心人物

 金ヒョンジは単なる側近の域を超えている。彼女は、李在明の弁護士時代から城南市長を経て大統領に至るまで、経済共同体であり、犯罪共同体だった。城南市長時代から資金源を管理し、現在は大統領室付属室長として人事・予算を統括している。何よりも衝撃的なのは、彼女の役割が政権の司法リスクコントロールタワーだったという疑惑である。
新都市大長洞の不正事件では、パソコン50台を破棄せよと証拠隠滅を指示した疑惑を受けている。対北不正送金事件では、李華泳・京畿道副知事に不利な供述が出るとソル・ジュワン弁護士を強迫し辞任させて、李在明側の弁護士を投入させる外圧を行使した。 
金ヒョンジの口から出た言葉は、さらにぞっとする。「500億ウォンの大統領選挙を行うのに6000万ウォンで何をするのか」と激昂、「民主党で200億ウォンを支払って、300億ウォンを繰り上げて選挙を行わなければならない」との録音記録が露呈、数百億ウォンの資金を気兼ねなく運用していた彼女の地位をよく表わしている。ここでの「300億ウォン」は、大長洞の「貯水池」資金を意味している。法の専門家でも何でもない彼女が、権力の中心部で資金を管理し、証拠隠滅しながら司法府を壟断したすべての行為が、30年来の振る舞いの実態である。

◇「大物スパイ」を国際協力で遮断

 米国共和党のユ・ジンチョル予備候補は李在明の兆単位の秘密資金がシンガポールに隠匿されており、金ヒョンジ室長がこの海外送金の「中間通路」の役割を果たしたという疑惑を暴露した。シンガポールは金ヒョンジ室長の息子が留学している国でもある。
さらに、米国の情報機関(DNI・CIA・FBIなど)がこの「貯水池口座」を把握、韓米金融情報共助体制が稼働していたことが分かった。李在明の資金源が遮断されれば政権が崩れるという警告と共に、韓国の透明な捜査協力がない場合、米国議会次元の聴聞会まで検討するという強硬な姿勢だ。この事件がすでに政権レベルの組織的な資金流出事件に拡大していることを示唆している。
それだけではなく、金ヒョンジは「建国以来最大のスパイ団事件の主人公となり得る」という主張まで提起されている。彼女が京畿東部連合ネットワークの中心人物で李在明と李石基をつなぐ役割を果たし、北韓発の反米スローガンと一致する文言を使用したという根拠から、権力上の序列で李在明よりも大物級と推定されている。

◇正義の審判とベネズエラ教訓

 金ヒョンジ疑惑に対する政権の対応は非常識だ。深刻なのは、金ヒョンジ問題を覆い隠すための権力の無理数だ。特検の拘束令状棄却に対して司法府を圧迫するために民主党議員たちが最高裁に乱入する初めての事態まで発生した。法治主義の根幹を揺るがすこの行為は、金ヒョンジが国政監査に出る瞬間、「李在明と金ヒョンジが共にした30年の犯罪履歴が暴露され、政権が崩壊する」危機意識の発露でもある。
現在の李在明政権は、経済崩壊と社会システムまひを経験したベネズエラのマドゥロ政権と比喩されている。ポピュリズムと統制経済、言論統制によって現実を隠そうとした社会主義実験の顛末が、大韓民国で繰り返されようとする可能性が高まっている。司法権無力化の試みと無理な裁判所圧迫、そしてその隙に鄭清来議員の浮上で権力漏水が始まった現象は、砂上の楼閣の崩壊を予告している。
国民には知る権利がある。正体不明の人物が国家権力の心臓部で権力を私物化、証拠隠滅を図り裁判にも介入、進んで国際金融秩序を乱したという疑惑に対しても李在明は答えなければならない。金ヒョンジを国政監査に直ちに出席させ、その黒い実体を一つ一つ明らかにしなければならない。この違法と不正を終わらせる唯一の道は、正義の審判だけだ。
金ヒョンジ疑惑は李在明政権崩壊の引き金だ。国民の監視と正義の捜査だけが、大韓民国を生かす道である。

高永喆(コ・ヨンチョル)
拓殖大学客員教授、韓国統一振興院専任教授、元国防省分析官。著書に『金正恩が脱北する日』(扶桑社)など。

 


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