駐日韓国大使館の土地を寄贈

故・徐甲虎氏「今月の在外同胞」に選定
日付: 2025年10月15日 13時02分

 在外同胞庁(金炅俠庁長)は「今月の在外同胞」として、在日1世の実業家・故徐甲虎氏=写真=(1914~76年)を選定した。徐氏は都内の駐日韓国大使館の建物と敷地を政府に寄贈、60年代の経済開発期に在外同胞として初めて本国への大規模投資を行い、繊維産業の基礎を築いた人物として知られる。14年、慶尚南道蔚州郡の農家に生まれ、その後に来日。48年に「阪本紡績」を設立し、日本の納税者ランキングで上位にランクインするほど成功を収めた。民族教育にも尽力、大阪の民族学校・金剛学園の設立に貢献、長年にわたり運営を支援した。
徐甲虎氏の母国愛は、「母国投資の先駆者」という評価によく表れている。63年、ソウル永登浦の「泰昌紡織」を買収し100万㌦を投資。在外同胞として初の大規模投資を実現した。当時、外資の導入が急務だった韓国経済にとって、まさに恵みの雨のような出来事だった。その後「邦林紡績」「ユンソン紡績」を経営、経済発展をけん引した企業家の1人となった。第1次オイルショックと工場の火災により母体企業「阪本紡績」が倒産。76年に62歳で死去した。
巷で「悲運の財閥」と囁かれるが、莫大な資産を惜しみなく投じたその寄付哲学の根底には、いつも人に対する温かなまなざしがあった。大阪に住む三女・景南氏は父親を以下のように振り返る。「父は本当に心の優しい人でした。地位の高い人にも低い人にも、いつも謙虚に『和をもって接しなさい』と口癖のように言っていました。会社の守衛さんや女性社員にも家族のように接し、有名人に会っても『頑張れ』と励ますような人でした」。
駐日韓国大使館は2013年の新庁舎開館時、同氏の号を取った「東鳴室」という記念室を設置。さらに昨年、寄贈地が国有化された11月1日を「徐甲虎の日」と定め、その崇高な志を称えている。
金庁長は、「徐甲虎氏の献身は祖国の国際的な地位を高め、在日社会と経済発展に大きく貢献した。その崇高な愛国心が忘れ去られぬよう、25年10月の在外同胞として選定した」と述べた。(ソウル=李民晧)


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