ネットフリックスのオリジナルアニメ「Kポップ デーモンハンターズ(Kデーハン)」の世界的ヒットが、外国人観光客拡大の新たな原動力となっている。昨年約1100万人だった訪韓観光客は、今年7月までに累計828万人を記録。順調な回復傾向を見せる中、「Kデーハン」ブームが下半期の観光客増加をけん引し、「2000万観光客時代」の可能性を高めていると分析。
今回の現象は単なるコンテンツ消費を超え、観光や消費パターンを変化させ、「Kヘリテージ(伝統遺産)」をグローバルトレンドへと押し上げている。専門家は「Kデーハン」成功の背景として、Kポップのファン層に馴染み深い「成長ストーリー」と韓国的ファンタジー要素(妖怪・トッケビなど)の融合を挙げる。
「見る」から「体験する」観光へ変化
「Kデーハン」シンドロームは観光客の旅行パターンを「見る観光」から「体験する観光」へと拡張している。かつてKドラマが特定のロケ地を中心にファンを集めたのに対し、今は韓国人の生活や文化を直接体験しようとする需要が増えている。
あるインバウンド観光プラットフォームによると、この夏「Kデーハン」の主人公が着用したノリゲ制作ワークショップの予約は前年同期比約2133%急増した。過去ドラマ『トッケビ』が江陵の海岸、BTSのアルバムカバーが江陵のバス停にファンを引き寄せたとすれば、『Kデーハン』は国立中央博物館訪問、DMZツアー、キムチ作り体験へとつながり、ファンが韓国の歴史と文化を能動的に学び体験する活動に導いている。
「Kヘリテージ」が産業のキーワードに
この熱気は産業界にも広がっている。観光業界では9月に入ってから、スペイン(前年同期比146%増)、ドイツ(122%増)など欧州発の航空券予約が目立って増加した現象を「Kデーハン効果」と分析している。
国立中央博物館のグッズブランド「ミュズ」は今年上半期だけで約115億ウォンの売上げを記録し、過去最大の実績を上げた。製菓会社オリオンは国立中央博物館とのコラボ版を、化粧品会社コスマックスは宮殿フレグランスを発売するなど、業界全体で「Kヘリテージ」が核心キーワードとして浮上している。
他方、課題も明白だ。一部人気グッズの常時品切れ状況は、零細による生産構造が急増する需要に対応できていないことを示す。専門家は、この問題を放置すれば粗悪な類似品が氾濫し「Kヘリテージ」のイメージを損なう恐れがあると警告する。
業界では、Kヘリテージへの高い関心が一時的な特需に終わらないためには今が重要な時期だと見ている。伝統工芸職人の支援と品質管理の体系化を成し遂げる必要がある。そうしてこそ韓国国家ブランドの価値を守り、信頼と産業的成長につなげることができるからだ。(ソウル=李民晧)