韓国の1人当たりの国民所得(GDP)が22年ぶりに台湾に追い抜かれる見通しだ。人工知能(AI)という第4次産業革命の波に乗った台湾が急成長を遂げる一方、韓国は10年以上も3万ドルの壁に閉じ込められ低成長の泥沼に沈んでいる。革新の欠如と硬直した経済構造がもたらした「予見された危機」だと指摘されている。
台湾の最近の経済成長は目を見張るものがある。今年第2四半期の成長率は8%で韓国(0・7%)を大きく上回り、年間成長率見通しも4・5%に迫る。この高成長に支えられ、今年台湾の1人当たりGDPは3万8066ドルで韓国(3万7430ドル)を上回ると予想されている。
さらに台湾は来年「1人当たりGDP4万ドル時代」を開くと見込まれる。急成長をけん引したのは半導体とAI産業に対する「選択と集中」戦略だった。台湾は世界のファウンドリー市場の70%を握るTSMCを筆頭に、部品・装置・設計分野の革新企業を育て、強固な産業生態系を築いた。
政府の全面的な支援も決定的だった。2021年の干ばつ時に農業用水まで引いてTSMC工場に供給した逸話は広く知られる。また人材不足を解消するため大学が半年ごとに半導体専攻の新入生を募集できるよう制度を改めるなど特例的な政策を続けた。GDPの1%以上をAIインフラに投資した効果も重なり、TSMCは急成長し時価総額がサムスン電子の3倍を超えた。
一方、韓国経済は11年連続で1人当たりGDP3万ドル台にとどまり、0%台の低成長が常態化している。最大の要因は新成長動力の不在。韓国の10大輸出品目のうち八つが20年前と同じだ。硬直した労働市場と規制は企業革新を阻み、核心人材の流出も深刻だ。昨年、博士号を持つ理工系人材の海外滞在率が22・7%に達するなど「頭脳流出」が一層深刻化している。
専門家は、今からでも切迫感を持って経済体質を改善すべきだと口をそろえる。規制撤廃と革新企業育成、AIをはじめとする未来産業投資と人材育成に国家的力量を集中すべきだとの意見だ。