金永會の万葉集イヤギ 第61回

舎人たちの歌(万葉集171~193番歌)
日付: 2025年07月31日 11時27分

 182番歌。

鳥 垣 立 飼 之
鴈 乃 兒 栖立 去者
檀岡尒 飛反來 年

鳥を、塀をめぐらして飼っていたね。
雁が巣を作り宿って飛んで行った。
斧折(檀木)の丘にまた飛んで戻って来た。

雁は飛んでいってはまた戻ってくるのに、去って行った皇子は戻ってこないという切なさを表した歌だ。すごく文学的な作品だ。

191番歌。

毛許 呂 裳 遠 春
冬 片雪 而 幸 之
宇 陁 乃 大野 者
所 念 武 鴨

遠ざかるものよ。
冬の深雪に降られながら去っていらっしゃるね。
皇子が宮を出て、坂道や大きな野原を通っていらっしゃる。
君を思うよ。

最初の句は果敢な倒置法が使われている。「呂 遠」は「遠ざかるものよ」と解読される。終わりの句の「武」は、韓半島語の方言の「~ダケ」で解ける。全てが韓半島語を知ってこそ解読される。このような表記法のため、日本人の万葉集の解読は壁にぶつかるのだ。日本人は聞きたくないだろうが、万葉集を解読するためには韓国語も習得する必要があると思う。このことについては、後ほど説明する。

192番歌。

朝日照
佐 太 乃 岡邊尒 鳴
鳥 之 夜鳴
變布此 年 己 呂 乎

朝日が空に昇って照らす。
舎人たちが丘の周りで大いに泣く。
鳥が遅い夜なのに鳴く。
皇子様が亡くなったことの報せが続くものよ。

今回紹介した「舎人たちの歌」にはきめ細かな内容が含まれている。作品の数も23首に昇る。舎人たちは高い地位の者でないため、歴史的な資料は多く残っていない。そのため、万葉集に収録されている舎人たちの歌はきわめて重要だといえる。
万葉集第2巻171番歌から193番歌は、舎人たちの生活が分かるとても貴重な歴史資料だ。
草壁皇子と舎人たちの義理の関係を現代日本人たちに紹介することができて嬉しい。読者の皆さんにこの夏、嶋宮へ行かれて持統天皇と草壁皇子の歴史を感じてみることをお勧めする。
さようなら、舎人たちよ。

 舎人たちの歌(万葉集171~193番歌)<了>


閉じる