先端技術の海外流出防止へ

改正保護法 10月まで取り締まり強化
日付: 2025年07月31日 11時08分

 韓国警察庁は10月末まで、先端科学技術の海外流出取り締まりを強化する。7月22日に施行された改正産業技術保護法によって、取り締まりの要件が緩和され、処罰の範囲が拡大したことから、集中取り締まり期間とした。国内外の関係機関とも協力し、犯罪で得た利益を全額回収することで技術流出を防ぎ、経済活性化を後押しする。

 改正産業技術保護法は、技術の国外流出を犯罪として取り締まるための要件が緩和されている。権利の侵害行為に紹介、斡旋、誘引などが追加され、処罰の範囲が拡大したのに合わせて取り締まりを強化する方針。

国別で中国が最多

 7月23日に警察庁が発表した今年1~6月の先端技術の海外流出摘発データによると、摘発件数は8件。国・地域別では中国への流出が5件で全体の62・5%で最も多かった。他に米国、インドネシア、ベトナムが各1件だった。
分野別では半導体が3件、機械が2件、ディスプレイ、電機・電子、その他が各1件だった。
8件のうち、国外に流出すれば国の安全保障や経済に悪影響を及ぼすコア技術が1件含まれていた。

摘発で65億㌆回収

 一方、昨年摘発した国外への技術流出は27件。国・地域別では、中国への流出が20件で全体の約75%を占めた。次いで米国が3件、日本、ベトナム、ドイツ、イランが各1件だった。また、技術流出の報酬などを特定し、約65億ウォン(約6億9000万円)を回収した。
分野別では半導体が9件で最も多く、ディスプレイが8件、電機・電子が3件、情報通信が2件、自動車鉄道、生命工学、機械、その他が各1件となっている。
半導体・ディスプレイ、車載電池、人工知能(AI)、サイバーセキュリティーなど、主力産業関連で技術的・経済的価値が高く、国外に流出すれば経済と安全保障に悪影響を及ぼすことになる「国家戦略技術」の流出は11件だった。23年は2件、22年は4件、21年は1件だったが、昨年から急増した。

年俸の3倍超提示

 中国企業は韓国人エンジニアを採用する場合、通常現在の年俸の3倍以上を提示するという。
技術流出を防ぐため、各社は対策を立てている。
サムスン電子とSKハイニックスは、全役職員と秘密保護誓約書を交わし、退職者と退職予定者にも就職制限誓約書を課している。
現代自動車グループはすべてのチームごとにセキュリティー担当者を指定した。また定期的に役職員を対象に情報流出事例、社内規定などを教育している。

年平均22件が流出

 国家情報院によると、23~24年の2年間に摘発された国家産業技術の流出件数は46件。件数は直近の10年間で毎年20件以上で推移し、年平均22件の技術が国外に漏れている。
代表的な事例としては、20年に韓国科学技術院の教授が中国の「千人計画」に協力し、自律走行技術に関する国家研究成果70件以上を流出したことが挙げられる。この教授は23年に産業技術保護法違反で懲役2年の判決が確定した。
今年5月にはSKハイニックスの中国現地法人の元従業員が、半導体製造に関わる機密情報を中国企業に流出させたとして、ソウル中央地検から逮捕、起訴された。中国通信機器大手の華為技術子会社の海思半導体から転職の打診を受け、写真を撮るなどして情報を流出させたとみられる。
警察庁は「技術流出によって、いかなる経済的利益も得られないようにする」としている。


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