AIサーバー向けに需要が急増 するHBM半導体
人工知能(AI)の処理に特化したAI半導体の開発競争が世界的に拡大・加速している。こうした中で韓国はHBM(高帯域幅メモリ)と呼ばれる生成AI向けの高性能メモリー半導体を中心にAI半導体の開発で先行している。
HBMはメモリー半導体のDRAMチップを積み重ねて3次元構造(積層化)にすることで大容量のデータを高速で処理できるため、AIサーバー向けに需要が急増している。
AIの学習や推論に使われる画像処理半導体(GPU)と共にAIサーバーに搭載されるHBM半導体の世界シェアは、SKハイニックスとサムスン電子の2社で9割を超える。このHBM開発では、韓国の設計専業のAI半導体スタートアップとチップの積層加工技術に優れる日本の半導体製造装置、素材メーカーがタッグを組み、量産化を実現。
SKハイニックスの先端製品はDRAMチップを8層に積み重ねる積層構造だが、12層構造の次世代品のサンプル出荷も始まった。ますます多層化するHBMの量産化には、精緻な積み上げ技術が求められ、日系の装置・材料メーカーには大きな商機となる。
設計に特化したファブレス・
スタートアップの躍進
韓国政府はAI半導体産業を国家戦略技術に指定し、AI半導体スタートアップの育成・支援に乗り出している。これを受けて、韓国ではAI半導体の設計に特化したスタートアップ企業が続々と誕生し、注目を集めている。
エッジAI用の半導体ファブレス・スタートアップのDEEPX(ディープエックス)、AI推論を最適化するデータセンター用AI半導体を開発するFURIOSA AI(フュリオサ・エイアイ)、いまやアジア初のユニコーンAI半導体スタートアップ企業に成長し、日本にも進出したRebellions(リベリオンズ)などである。
このうち、フュリオサ・エイアイは最近、米国メタ社による8億ドルでの買収提案を受けたものの、これを拒否して話題になった。この一件は韓国AI半導体スタートアップの企業価値評価の高まりを示すトッピックと言えよう。
日系の半導体封止装置メーカ
ーが韓国で生産拡大
HBMの市場規模は2027年には175億ドルに拡大すると見込まれている。HBMに代表される韓国でのAI半導体の製造が増える中で、日系半導体関連装置メーカーの韓国での設備投資も拡大傾向にある。半導体製品を傷や汚れから守るモールディングと呼ぶ半導体封止装置メーカーのTOWA(本社・京都市)は、18年から韓国で半導体封止装置を製造しているが、今年6月に天安市に第二工場を立ち上げ、増産に乗り出した。
韓国はメモリー半導体の製造に強みを持つが、製造装置の国産化率は約2割にとどまっており、半導体製造装置や素材は日本企業が提供する相互補完関係にある。特に、回路を形成したウエハーを切り分け、配線・封止、検査する「後工程」と呼ばれる仕上げ工程では日系専業メーカーが強みを発揮している。
AI半導体の回路設計の上流工程を担う韓国スタートアップと、後工程の装置・材料を提供する日本企業との協業化の取り組みは、韓日両国が戦略産業と位置付けるAI半導体分野での韓日協業の試金石として注目される。