李在明大統領が3日に行った記者会見で最も強調したのは「コミュニケーション」と「協治」だった。大統領は「国民を一つにまとめる統合の政治が求められる。特定の立場に偏った人材のみを起用するのは、国民の代表たる大統領の職責にふさわしくない」と述べた。このコメントの真価は、実践の有無によって問われることになる。
(ソウル=李民晧)
「消去法」で選ばれた自覚も
青瓦台の迎賓館で行われた「大統領就任30日、メディアが問い、国民に答える」記者会見は、これまでにない形で注目を集めた。通常、就任100日目に行われる記者会見を30日へと前倒しで実施。あらかじめ質問者を指定する「台本通り」のやり方を排し、くじ引きによって質問者を選ぶという点も新しかった。予定時間を30分以上超過し、約2時間にわたって行われた会見は、概ね前向きな評価を得た。
李大統領は率直な姿勢も見せた。自身の当選について「お前(李在明)も避けたい。だが(他の候補より)まだマシだから(大統領に)選んだというのも知っている」と述べた。また、政権交代のたびに人事も組織も一変する公務員社会の現状については「非効率的だ」と指摘し、「公務員の専門性を尊重する」との姿勢も明らかにした。
対立と協力は分けて考えるべき
この日の会見では韓日関係に関する認識も示された。李大統領は「韓日間には敏感な懸案が多いが、両国は地理的にも近い隣国であり、同じ庭先を共有する関係にある。(歴史認識や領土問題などの)対立要素はあるが、それらと協力関係を混同する必要はない。柔軟かつ合理的な姿勢が求められる」と強調した。
李大統領はさらに、「両国とも自由民主主義陣営に属し、北韓の核・ミサイルの脅威にさらされている点も共通している。米国と特別な同盟関係にあるという点でも一致しており、戦略的・軍事的にも共有できる利害が多い。経済面でも連携の余地がある」と説明した。さらに李大統領は、日本人拉致問題についても共感を示し「韓国政府としてできることがあれば協力する」と述べた。
一方で、韓国人拉致被害者や6・25戦争当時の国軍捕虜問題には言及がなかった。自国民の人権が外国人より後回しにされることがあってはならない。
言葉よりも実行が問われる
今回の会見では、野党との協治についても語られた。大統領は「野党議員も国民に選ばれた代理人であり、尊重されるべきだ」と述べ、相手陣営への敬意を示した。ただし、与野党党首会談の定例化については「基本的には必要だと思っている」としつつも、明確な方針は示さなかった。
問題は実行力だ。大統領が会見でコミュニケーションと協治の重要性を語った当日午後、与党・共に民主党は、野党・国民の力が不参加のまま、金民錫・国務総理候補の任命同意案を単独で可決させた。大統領の発言が空しく響いた瞬間だった。
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李在明大統領が3日、青瓦台迎賓館で開かれた記者会見「大統領就任30日、メディアが問い、国民に答える」で記者の質問に答える