韓国のゲーム開発大手クラフトンは6月24日、日本の広告大手ADKホールディングスを約750億円で買収することで合意したと発表した。ADKはアニメーション制作に強みがあり、今回の買収を機にアニメとゲームのコラボレーションによって相乗効果を発揮し、世界市場開拓の足掛かりとして期待される。
クラフトンは、ADKの親会社である米投資ファンド・ベインキャピタルの関連会社を通じ、ADKの全株式を取得する。ADKはクラフトン傘下で広告事業も続ける。
ADKは1999年に旭通信社と第一企画の合併によってアサツーディ・ケイとして発足。米投資ファンドのベインキャピタルの傘下となり、2018年に上場廃止。19年にADKホールディングスとなった。24年の取引規模は約3500億円。「ドラえもん」「クレヨンしんちゃん」「プリキュア」シリーズなど、人気アニメ300作品以上の制作に関わっている。
クラフトンは07年創業で、24年の売上高は2兆7098億ウォン(約2880億円)。ゲームの開発だけでなく、知的財産(IP)事業にも注力しており、日本法人も置いている。代表作の戦闘ゲーム「バトルグラウンズ」は世界中でヒットしている。
クラフトンはM&A(企業の合併・買収)を加速させ、eスポーツ、音楽関連などの企業とも連携してコンテンツの多角化を進めている。ADKはアニメの版権の一部を持つにすぎないが、同社を傘下に収めれば、ゲームへの活用に向けた交渉を進めやすくなる効果が見込まれる。
ADKはクラフトン傘下に入ることによって、世界市場開拓を期待できる。クラフトンのIP事業はゲームのライセンス契約が中心だったが、ADKの買収により日本アニメのIPを新たな成長機会と位置付け、ゲームとアニメの協業を推し進める。
日本動画協会によると、23年のアニメ産業は国内外市場合算で、前年比14・3%増の3兆3465億円となり、3年連続で過去最高を更新している。海外市場や配信の伸びが大きく、近年の円安で円建ての海外売上高が拡大した影響もあるとみられる。
内閣府の知的財産戦略本部が24年6月に発表した「知的財産推進計画2024」では、コンテンツ産業を基幹産業と位置付け、22年に4・7兆円だったコンテンツ輸出を33年には20兆円に拡大する目標が掲げられている。
ADKホールディングスの大山俊哉グループ最高経営責任者(CEO)は「両社の強みや培ったノウハウを合わせた戦略的パートナーシップにより、日本市場やグローバルコンテンツ市場での創造的な挑戦と成長が期待できると信じている」。クラフトンのキム・チャンハン代表は「協業を通じ、ゲームとアニメの間の多様な接点を継続的に特定し、両社の強みを融合させることで、グローバルコンテンツビジネスにおける新たな機会を創造していく」と、それぞれコメントしている。