韓国製防衛装備品のポーランドへの輸出の2次契約が、今月下旬に締結される。2022年の1次契約時より契約額は倍増する。李在明政権発足後、最初に締結される防衛産業輸出契約となる。尹錫悦前政権時代に「共に民主党」代表だった李大統領は、防衛装備品輸出を妨げるかのような言動を行っていたが、ここでも国益最優先の「実用主義」でかつての姿勢を転換させている。
最大規模の契約
ポーランドと締結されるのは、K2戦車180両を供給する2次契約。契約規模は約60億ドル(約8700億円)で、防衛産業輸出の単一契約としては過去最大規模となる。
2次契約は22年締結の1次契約と供給規模は同じだが、契約金額は倍以上に増えている。ポーランドで生産されるK2PLが改良型であり、従来型のK2より単価が高いうえに、技術移転、維持、補修、運営などの条件が含まれたことと、救難戦車、橋梁戦車など関連装備も供給されたことが、契約額上昇につながった。
K2戦車180両のうち117両は現代ロテムが生産して直接供給し、残りの63両はポーランド国営防衛企業PGZが現地生産する。
前政権時を踏襲
ポーランドへの大規模な防衛装備品輸出は尹錫悦前政権時代の22年7月に締結された基本条約がきっかけとなった。同年8月に124億ドル規模の1次契約を締結。K2戦車180両のほか、K9自走砲212門、FA50軽攻撃機48機などが含まれた。
23年12月からは2次契約に基づく個別契約が順次締結されている。今回のK2戦車の2次契約は李在明政権が発足して締結される初の大規模な防衛産業輸出事例となる。
韓国は防衛産業を「K防産」と称して主要輸出産業として育成しようとしている。ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)によると、19~23年の主要武器輸出国25カ国のうち、韓国は全体で10位。輸出先はポーランド、フィリピン、インドの順となっている。とくにK9自走榴弾砲は世界市場の約半数を占めている。同砲は大手防衛産業と国防科学研究所が1998年に共同開発。トルコ、ポーランド、フィンランド、ノルウェーなど9カ国に提供している。
ロシア侵攻機に
韓国では防衛装備品の輸出先を「防衛産業協力国」と称している。なかでも最大の取引先はポーランドで、ロシアによるウクライナ侵攻を機に、防衛力強化を急速に進めている。
李大統領は大統領選挙期間中、「防衛産業は半導体、車載用電池などとともに韓国経済を牽引していく産業であり、支援強化が必要だ。グローバル防衛産業の4大国にする」と述べている。
統制強化に反発も
一方で、「共に民主党」としては防衛装備品を輸出する際に、国会の同意を義務付けることで統制を強化するという法案の成立を目指している。これについては主要防衛産業各社が一斉に反発している。
関係者らは「機密が十分に維持できなくなり、交渉自体が決裂する恐れがある」「国会での同意のための期日が必要になり、入札締め切りが順守できなくなる」「行政手続きで事業が遅延し、輸出競争力が低下する」など懸念する声が上がっている。
「親中立法」へ疑念
この件について「国民の力」議員からは「韓国防衛産業の輸出対象国は、主に東南アジア諸国となっている。これらの国は、対中国で安全保障上の問題を抱えているため、『親中立法』ではないだろうか」との疑念の声が上がっている。
「共に民主党」代表時代の李氏はウクライナに韓国政府が視察団の派遣を決めたところ、「拷問技術を輸出するのか」と発言して問題視されたこともある。
李大統領は国益を最優先する「実用主義」を掲げて過去の発言を修正しているが、今後どのように取り組んでいくのか。韓国国民が注視している。