韓国鉄鋼首位のポスコグループと自動車メーカー首位の現代自動車グループは21日、鉄鋼と車載電池分野での業務提携を締結した。米トランプ政権の関税政策による通商環境の変化に対応するため、両社の強みを生かした相乗効果によって、先行き不透明なグローバル市場での成長を目指す。
現代自は先月、米国に2028年までに合計210億ドル(約3兆円)の投資を行うと発表した。そのうち58億ドル(約8000億円)で同社傘下の現代製鉄が電炉製鉄所をルイジアナ州に新設する。今回、ポスコは同製鉄所への投資の一部を負担する。
これによりポスコは北米鉄鋼市場に新たな足掛かりを築くとともに、自動車用の高品質鉄鋼と車載電池素材を供給する素材企業としての地位を確立する。一方、現代自は主要原材料の安定供給網を確保することによって、世界3大自動車メーカーの一角としての競争力を強化する。
新設される製鉄所は、原料から製品まで一貫生産体制を備える自動車鋼板に特化し、従来の高炉に比べ二酸化炭素(CO2)排出量を減らすとともに、高品質の熱延・冷延鋼板を年間270万トン生産する。
北米鉄鋼市場へ
これまでポスコはメキシコで自動車鋼板工場を運営していたが、北米では鉄鋼の生産を手掛けていなかった。現代自への投資を通じ、過去10年間保護貿易の障壁に阻まれてきた北米鉄鋼市場進出へ踏み出した。
ポスコは温室効果ガス削減の核心である水素還元製鉄の研究をリードし、現代製鉄はCO2排出量を抑えられる電炉運営の実績がある。技術提携によって温室効果ガスを減らしながら、高品質鋼板を生産する環境保全技術の進展も期待される。
原料調達を安定
両社は車載電池の原料調達でも協業する。ポスコは主要原料のリチウムを南米の塩湖やオーストラリアの鉱山の所有権を取得するなどして安定的に確保している。現代自は、自社の技術力と融合させて供給網構築や次世代素材開発を推進していく。
現代自との協業についてポスコは「保護主義的な貿易障壁で制限されてきた北米の鉄鋼市場に参入する足掛かりとしたい」とコメントしている。
現代自は「米国などのグローバル市場での事業機会を拡大し、自動車分野での持続可能な成長をより強固なものにする」としている。
取引先も米進出
韓国を代表する大企業2社の米国事業展開は、取引先企業にも影響している。
自動車の窓に取り付け、車窓の開閉を安全に制御する自動車用非接触センサーが現代自に採用された韓日合弁企業・ヴィトネットAPの長峯純一社長は「現代自の米国展開に合わせて、当社も米国法人を設立する」と自動車部品メーカーとして呼応する動きをみせている。同社はKOSDAQ上場を準備していたが、「3~4年後には米NASDAQへの上場を目指す」とより大きな株式市場への上場に目標を切り替えている。