国際秩序の再編か文明の再編か

安保と経済の現実に目を閉じる韓国政治
日付: 2025年04月22日 10時14分

 世界がウクライナ戦争と大西洋同盟の瓦解がもたらした国際秩序の再編への対応に腐心している。EUは米国との決別を覚悟、ウクライナ戦争の持続(=ロシアとの戦争)を公言している。中東での戦争を準備する米国は先月、対北抑止力を持ち駐韓米軍を護る防空ミサイル戦力の多くを中東に移した。韓米同盟の信頼にはひびが入った。一方で韓国は大統領の欠位による選挙を1カ月半後に控え、内戦の混沌状況が絶頂へ走っている。韓国の政治家たちは安保と経済の現実に目を閉じ、改憲や国会移転などについてのみ没頭している。

 世界の多くの国々がトランプ大統領のリーダーシップの二重性に直面、超不確実性の混乱に翻弄されている。トランプ大統領は不法滞在の外国人の追放に乗り出した。外国人500万人の社会保障番号(SSN)を無効化したという。外国人が自ら米国を去るようにIRS(納税情報)の取り消しも始めたという。韓国人たちもビザが取り消され、永住権を持つ人々も追放されているという。
天文学的な国家負債に直面し、米国社会を回復するためには非常な措置を取らねばならないというトランプ大統領の立場と主張は理解できるが、トランプ政権の要求と措置は受け入れ難い。トランプ大統領はウクライナ戦争とガザ紛争の即時終息を公約したが、当面、解決への進展は期待できない。ウクライナとEUが戦争を望むからだ。現実的に在来戦の総力戦を戦えない彼らは、核戦争も辞さない姿勢だ。特にロシアとの戦争を促すEUの小国の根拠のないロシアの脅威論は荒唐無稽といえる。
西欧は彼ら自身が作り出したプロパガンダから目覚めなければならない。来月8日、ロシアの戦勝80周年行事が予定されているが、ロシアと西欧間の大戦争は、ロシアがヨーロッパを先に攻撃したことがない。軍事的に欧州を席巻、掌握したフランス、ドイツなどがロシアに攻め込んだ歴史があるだけだ。ロシアは他国の領土も資源も必要としない。
連邦予算の無駄の除去と国防予算まで大幅削減を要求したトランプ大統領が突然、国防費1兆ドル拡大を発表した。トランプとポストトランプ時代の不確実性や権力再編の表れか。ドンバス紛争はロシアの勝利で決着するしかない。ロシアと米国の交渉(イスタンブール協議)は時間がかかる。何より米国の二重メッセージと外交チャネルの分化、米国内部の外交戦略葛藤が表面化している。ホワイトハウスのトランプウィトコフ米特使対ケロッグ特使ルビオ国務長官の路線衝突も隠せない。
ウクライナとの紛争や交渉で失敗しながら、トランプ大統領に与えられた外交戦略の選択肢は少ない。ロシアの要求の受け入れとウクライナへの圧迫、ロシアへの強硬制裁措置、制裁と支援縮小を並行する妥協案程度に要約される。
西欧は結局、ロシアとの戦争で敗れた。ここ30年間の一極体制崩壊と米国の覇権の弱体化は決定的だ。西欧のメディアやエリート層は内的混乱に陥った。トランプ時代でも隠せない衰退の兆候は、すでにゴルバチョフのペレストロイカと比較されるほどだ。
EUの中央集権化のための左派エリートの権力強化と民主主義弾圧は、モルドバ、ドイツ、フランス、ハンガリーの投票権を奪う試みなど、民主主義の抑圧事例を通じてEUの危機がヨーロッパの没落と軍事依存の深化がどれほど深刻かを見せている。米国中心ブロックと分裂したヨーロッパの未来がどうなるかに関心が向けられている。いずれにせよ、米国の言葉・約束は信じられなくなった。
米国の対中関税戦争は成功できないという指摘が多い。中国の貿易で米国の占める割合は15%以下だ。中国総生産の81%は内需、輸出は総生産の19%で、輸出で対米輸出は15%。つまり対米輸出はGDPの3%程度だから、内需を増やし、輸出を多様化すれば、対米輸出不振の影響はわずかだ。中国が内部の矛盾と混乱によって崩壊すると考えるのは誤判という指摘だ。文化・労働の危機など内部矛盾・弱点は米国と西欧社会も同じだ。
戦争は当事者の一方が戦争を継続する能力と意志が消尽すれば終わるしかない。旧大西洋同盟は戦争を継続する能力と意志がほとんど消尽された。残った能力は核兵器のみだ。

 

 


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