トランプ米大統領は2日(現地時間)、全世界を対象とした「相互関税」と呼ぶ関税措置を発表した。各国に一律10%の関税を課したうえで、国・地域ごとに異なる税率を上乗せする。韓国からの輸入品には25%が課される。自動車、スマートフォンといった電子機器が主要な対米輸出品目となっている韓国では、製造業を中心とした輸出産業への悪影響が確実視され、官民で対応に苦慮している。
対米輸出品目首位である自動車や自動車部品について、米国への輸出時に25%の関税が課されることで、相当な打撃となることが予想される。
自動車は米で生産
韓国の昨年の対米自動車輸出額は347億4400万ドル(約5兆1000億円)に上り、全自動車輸出額の49・1%を占めた。昨年の現代自動車グループ(現代自と起亜)の輸出台数は約97万台、韓国GMは約41万台となっている。韓国自動車メーカー各社は、米国内での生産を増やして関税による影響を緩和する計画だ。現代自Gは先月、米国に3兆円を投資して米国内での生産による関税回避策を発表した。
ベトナムに拠点
主要輸出品であるスマホや家電にも影響は及んでいる。世界3大電子製品生産基地である中国、ベトナム、インドにそれぞれ、34%、46%、27%と高関税が課された。サムスン電子はスマホの5割以上をベトナムで生産。サムスン電子単体での昨年の売上高のうち、29%を米国地域が占めている。一方、米国向け輸出用テレビと生活家電の中心的な生産拠点であるメキシコが追加関税を逃れたことについて、安堵する声が漏れ伝わる。
「Kビューティー」として近年、米国市場で存在感を増している化粧品、「Kフード」として浸透している食品は、米国内の生産設備の有無でメーカーごとに明暗が分かれている。
医薬品は関税対象から除外された。関税を課した場合、米国内の医療費高騰につながるとともに、医薬品供給に支障が生じることを防ぐためとみられる。
予想超える衝撃
韓国政府や市場関係者らは相互関税について、「予想以上の強度」と驚愕している。金融監督院は3日、報道資料で「市場の予想を大きく上回る攻撃的水準」と評している。
大統領権限を代行する韓悳洙首相は3日、首相公邸で開かれた「緊急経済安全保障戦略タスクフォース」会議で米国の関税政策について、「ただちに産業通商資源部の通商交渉本部長の訪米を推進するなど、緊密な対米協議を進める」と述べた。
産業通商資源部の安徳根長官は、大韓商工会議所で開かれた官民合同の米関税措置対策会議で、「グローバルで通商環境に多大な影響を与える米国側の関税措置は遺憾」と不快感を表し、「わが国の対米輸出と世界の交易に与える負の影響を厳しく見ている」と発言した。米関税措置への対応としては「持続的な協議と調整が必要だ。官民一体での協力を求める」と述べた。
成長率下ぶれ予測
韓国銀行と韓国政府は、米国の相互関税措置の発表前まで、今年の成長率を1%台半ばと見込んでいた。
米相互関税の影響についてアイエム(iM)証券のアナリストのパク・サンヒョン氏は「第2四半期から対米・対ASEAN輸出が鈍化し、国内成長率の下降圧力がさらに大きくなる。今年の成長率が1%を割り込むこともあるだろう」と予測している。英国リサーチ会社のキャピタルエコノミクスは同0・9%とし、従来の見通しを下方修正した。
韓日協力し交渉を
ピーターソン国際経済研究所の呂翰九・上級委員は打開策として、日本との連携を提案している。「同じ輸出構造を持っていて利益が一致する。昨年の対米貿易黒字は、韓国が660億ドル(9兆7000億円)で日本が680億ドルだった。自動車など製造業への対米投資、アラスカLNG(天然ガス)開発への参加など、対米交渉カードも似通っている。両国で連携すれば交渉力も倍増する」とコメントしている。