尹大統領弾劾のみ連帯

左翼も「統一」否定
日付: 2025年02月18日 11時55分

 混とんとする韓国政局―。日本のメディアは、尹錫悦大統領の弾劾が既定路線のように報道している。都内では、昨年12月3日の戒厳令宣布を非難する集会が多く開かれており、日本の左派系市民団体や政界関係者が後押ししている。今回は、従北とされる組織・韓統連の講演会から問題点を探る。

平壌に忠実な韓統連

 都内の会場で15日、在日韓国民主統一連合(韓統連、孫亨根議長)が「新春情勢講演会」を開催。会員のほか、日本の市民団体や政界関係者ら約40人が集まった。
当日は、はじめに藤本泰成・平和フォーラム顧問が「日本の軍事大国化と朝鮮半島」と題し講演、続いて孫議長が「尹錫悦罷免と韓国政局の展望」をテーマに話した。登壇者2人の講演後に質疑応答の場が設けられた。

■藤本顧問は「歴史」を強調

藤本顧問は、韓半島の歴史と日本との関わりについて古代の関係から説き始めた。江戸時代、徳川幕府が豊臣秀吉の2度にわたる侵略に対して「戦後補償」を行った通信使の存在などを高く評価した。一方で、江戸時代初期から現代に至るまでの話は、全て近代化以降に関係が悪化した歴史のみを解説した。
藤本顧問に対して「歴史を無視している」との批判は当たらないが、前近代の悪化した関係などは全く取り上げなかった。また、尹大統領の退陣を求める動きへの同調・連帯を表明しながら、争点に「歴史」を上げた根拠は希薄であった。講演の内容からして、強調すべきは「歴史」でなく「政治」だった。近代化以降の日本の軍事・政治的な在り方を批判した点こそ、藤本顧問の強調したかったことであっただろう。

■孫議長は「統一」明言せず

孫議長は、講演を通じ(1)尹大統領の弾劾の成否をシミュレーション(2)その後の大統領選に進んだ際の予想・期待(3)今後の韓日市民団体が進んで行く方向性について語った。
結論から述べると、孫議長は(1)尹大統領が罷免されない場合についても意見を述べ(2)現行の多数派野党「共に民主党」ではない政党(進歩党)が将来的に台頭する可能性に言及(3)韓国本国から拒絶(入国拒否)されている自身の立場を明かし、在日社会を中心にして韓国政府へ意見を提出する活動を行っていくと表明するなどした。いずれも、日本の左派系市民団体との関わりが自らの活動に重要となってくる点を明らかにした。
講演後の質疑応答の場で、参加した日本人から興味深い質問が出た。「日本が植民地支配をしていなければ治安維持法、その後の国家保安法もなかったため、日本の我々の問題として課題にしなければいけないと共感できる。南北の統一のため、韓国ではなく北のことを自分たちの問題であると多くの日本人に認識してもらうためにはどうすればよいか」と登壇した2人に意見を求めた。
藤本顧問は、戦前と戦後の問題を学習する必要性を強調。孫議長は、国家保安法によって韓国政府から旅券が剥奪されている自身の境遇について再び述べた。「韓統連は、総連系の団体であると韓国政府から認識されている」とした。
孫議長は〝南北の統一のためになにをすべきか〟との質問に対し、明確に回答しなかった。
尹大統領退陣を同じく叫びながらも〝南北の統一〟を共有し切れないということは、在日同胞社会が広く共有しておくべき点だろう。
朝総連の対南政策転換に従った韓統連の動きに警戒を強めなければならないのは明白だ。連帯を表明する日本の市民団体にも注意し、その主張を解析できる政治的な判断力が、在日同胞社会には切実に求められている。

15日、藤本泰成・平和フォーラム顧問が韓統連の「新春情勢講演会」に登壇。近代以降の日本の「歴史修正主義」を強く否定した一方で歴史認識には偏りをみせた


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