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揺らぐ韓国の政治・経済
日付: 2025年02月04日 11時58分

 今回は、ユン・ソクヨル大統領の非常戒厳に端を発した韓国政界の混沌の状況をまずは確認、その上で韓国経済に与える影響を考察していきたい。
[韓国の政治情勢]
韓国の世論調査機関であるギャラップは1月24日、進歩系最大野党・共に民主党の支持率が再び40%に上昇し、38%であった保守系与党・国民の力を上回ったと発表している。同17日に発表された前回調査では、約5カ月ぶりに国民の力の支持率が共に民主党を上回ったが、1週間で再逆転している。
一方、世論調査会社であるリサーチミンがニュース・メディアのニューデイリーの依頼で1月23日と24日の2日間、全国の満18歳以上の男女2000人を対象に世論調査を実施し、発表した結果では、国民の力を支持するという回答者は46・7%、共に民主党を支持するという回答者は36・8%であったと報告。両党の差は9・9ポイントで、誤差の範囲を超えて、与党・国民の力がリードしている。揺れる韓国人の気持ちが反映されているということであろう。
[揺れる韓国経済]
韓国政府は、政策金融機関と民間銀行に対して、旧正月の連休を迎えて、中小・中堅企業などを対象に計94兆6000億ウォンに達する資金供給を前向きに行うよう行政指導している。政治動向不安もあり、万が一を意識したオペレーションでもあるようで、金融委員会は1月19日、金融界から旧正月連休の間、脆弱部門に対する資金供給と国民の金融利用に不便がないようにするため、様々な施策を設けて施行する対応を取りたいとしている。
内需が落ち込んで国内総生産(GDP)が減少、昨年10~12月期と今年の経済成長率も低下するとの見通しが国内では出てきている。中央銀行である韓国銀行は非常戒厳後の政治の不確実性や経済心理の冷え込みの為、今年の韓国の経済成長率は消費など内需を中心に約0・2ポイント下落すると予測した。[国際信用格付け]
揺れる政情、経済動向を受けて、国際的な信用格付け機関にも動きが見られた。即ち、スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)、ムーディーズ、フィッチという、いわゆる世界の3大信用格付け機関のうち2社が、昨年末の「非常戒厳」事態を契機に韓国で起きている政治的混乱について、「事態が長引けば国の信用格付けが下落する可能性がある」と警告している。
韓国の信用格付けは、アジア通貨危機が発生し、事実上の国家破綻となった1997年に投機的等級(ダブルB格以下)まで下落、以前の水準を回復するのに18年掛かっている。フィッチは、「韓国の政治危機が長引くか、政治的な分裂が政策の効率性と経済成果を損なう場合、引き下げられる可能性が高まるだろう」としている。
また、ムーディーズは、「最近の政治的対立によって経済活動が長期的にわたり混乱に陥ったり、消費者や企業からの信頼が失われたりすれば、否定的な影響を受けるだろう」との見方を示している。国際経済社会の不信感は高まりつつある。
[米新政権と韓国の対米貿易]
上述したような、揺れる韓国経済を安定させるためには、韓国としては対米貿易を安定、拡大させていくことが肝要となる。そこで、最後にトランプ政権と韓国の対米貿易について、簡単に述べておきたい。
米国でトランプ政権が再発足し、「対米貿易黒字」を持つ国は戦々恐々としている。韓国は2023年基準では米国の8大貿易赤字国の一つとなっており、対象となる商品は自動車、一般機械、半導体、自動車部品、コンピューター、石油製品、鉄鋼、電池、家電、無線通信機器、繊維類、船舶、ディスプレイなどが見込まれている。これらの商品の対米輸出が鈍化するのか否かは、韓国経済の行方を見極めるうえでも重要であり、今後の動向をフォローしたい。
以上、少しでもご参考になれば幸いである。
(嘉悦大学副学長、愛知淑徳大学名誉教授 真田幸光)


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