「中央選挙管理委員会(選管委)水原研修院で中国人スパイが逮捕され、沖縄の米軍基地に護送された」という報道は事実だろうか。現状では在韓米軍の発表から否定的な報道が大勢を占める一方、依然として多くの疑問が横たわっている。新たな調査と発表が待たれる。
(ソウル=李民晧)
非常戒厳令が発令された昨年12月3日夜、選管委水原研修院に韓国情報司令部の特殊要員が出動した。
これについて「共に民主党」の金炳周議員は12月9日、「情報司令部が特殊要員を指名し、12月3日と4日に選管委のスタッフを誘拐しようとした」と明らかにした上で、当該スタッフが監禁されていた場所と逮捕の状況まで説明した。元陸軍大将で、韓米連合軍司令部の副司令官を務めた議員による発言とあって信憑性は高いものと思われた。
しかしその後、上記のような事態は発生していなかったことが判明した。
当該の日、情報司令部の特殊要員らが夜間に研修院へ出動したのは確かだが、待機した後に何ごともなく帰ったという。いわゆる「手ぶら」作戦だったというわけだ。
「フェイクニュース」の出どころ
それから1カ月後、韓国の某メディアは戒厳令当日、米韓共同作戦により中国人99人が研修院で逮捕され、米軍基地がある日本の沖縄に護送されたと報じた。
しかし、この報道に対して「フェイクニュース」であるとの反論が出た。情報の出どころは選管委と在韓米軍だ。選管委はプレスリリースの中で「当日宿泊したのは研修院の教育課程に参加した公務員と講師96人で、戒厳軍は研修院庁舎内に進入しなかった」と発表した。
在韓米軍側も反論した。在韓米軍司令部は1月20日と21日、公式SNSで「在韓米軍、駐日米軍、米国防情報局(DIA)、米国防部(DOD)のいずれもそうした動きには加わっていない」と発表した。それでもなお、当該メディアはいまだ「事実」であるとの立場を貫いている。
選管委内の中国人スタッフの有無
選管委に勤める中国人スタッフの有無を確認するのは難しいことではないはずだ。彼らがいたかどうかを確認し、万が一、在職が分かった場合はどのような職務に当たっていたかを確認すれば疑惑は払拭できるだろう。また戒厳令当日における外国人の宿泊記録を確認することが必要だ。
尹錫悦大統領の弁護団は、憲法裁判所に対し、選管委が雇用した外国人選挙事務員の雇用状況に関する資料の確認を求めている。韓国の公職選挙の管理過程に外国人が存在し、関与するなどあってはならないことだ。
米軍秘密工作機の飛行記録
軍事評論家のシン・インギュン自主国防ネットワーク代表は、自身のユーチューブチャンネルを通じて「米国の特殊作戦輸送機C146が昨年12月4日と5日に飛行した記録が残っている。この飛行機が中国人スパイ逮捕工作に関与した」との見解を述べた。
C146は、米軍の特殊工作員が秘密裏に潜入する際に使用する飛行機だ。シン代表は、その日の飛行事実は確認できる半面、行き先の記録が残っていないことを踏まえ「(米国側で)今後、何らかの発表があるかもしれない」と主張した。
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昨年12月4・5日の飛行記録が確認された米国の特殊作戦輸送機C146