成田国際空港がある千葉県は、日本の空の玄関口として韓国とのゆかりが深い。今年は、韓日国交正常化60周年の節目の年。在日本大韓民国民団千葉県地方本部(高炳佑団長)が開催する10月マダンは恒例行事となっており、地域に根づいている。在日本千葉韓国人連合会(梁美榮会長)の活動も盛んだ。地域を支える在日韓国人の活躍を中心に、関係者に取材した。
10月マダンでマッコリ訴求
民団千葉県地方本部は毎年10月下旬に「日韓友好のマダン(広場)in千葉」と題し、「10月マダン」を開催している。
1998年から現行の千葉中央公園を会場に行われている。開催を主導したのが昨年6月15日に亡くなった朴昇浩氏だった。
千葉の「10月マダン」は1998年から千葉中央公園で開催。会場手配など昨年亡くなった朴昇浩氏が尽力した。現在、地域の住民からも好評を博している(在日本大韓民国民団千葉県地方本部提供)
高炳佑団長は、「今日の千葉民団は、朴昇浩顧問が築いた礎の上にあると言っても過言ではない」とし、「先人の知恵や取り組みをいかに守っていけるかが、今後の千葉民団の課題だと思っている」と話した。
10月マダンの会場では例年、芝山醸造(後藤英毅代表)が製造する「華マッコリ」(華本生マッコリ)がブースを出店。
マダンの会場で「華マッコリ」を購入し、会場で味わった人の中には、法被姿の男性から声を掛けられた経験があるかもしれない。その男性こそが後藤代表であり、毎年マダンを訪れているのだという。後藤代表は、「マダンのたびに必ず買いに来てくれるリピーターも多くいる」としている。会場で販売される各種のKフードとも相性が良く、また華マッコリは販売経路が限られているため、マダンを好機と見て購入する来場者は多いようだ。
「華マッコリ」は、日本産コシヒカリと韓国の麹を使い、韓国製の甕(”呼吸する”甕)で熟成する。人工甘味料などは一切使用しておらず、コメ本来の自然な甘みと華やかな香りを楽しむことが出来る。
2022年には韓国の外交部から表彰を受けたこともあるという後藤代表。尹東姫夫人と協力して、韓国から甕や専用器具、麹を調達しているという。
韓国の麹と甕で作っている点を除けば、コメの条件については「日本産コシヒカリ」としているのにも理由があるという。昨年11月に執り行われた、柏市制施行70周年を記念したイベントでは、柏産コシヒカリを使用した限定モデルのラベルをつけた特注品500本を製造した。
韓日の地道な草の根交流を、千葉のマダンや芝山醸造がつないでくれている縁は、国交正常化60周年を迎える今年だからこそ、改めて感謝し大切にしたい。
甕の並んだ部屋は冬場、温度管理が徹底されている。後藤英毅・芝山醸造代表取締役は、「麹は生き物。条件が少し変わるだけで、同じ味は出せなくなってしまう」と語る