高永喆 韓半島モニタリング 第37回

尹大統領が非常戒厳令を宣布した理由
日付: 2024年12月10日 11時56分

 12月3日、尹錫悦大統領の非常戒厳令について、日本の人々は尹大統領が軍部独裁を画策したのだと誤解している。韓米の左派メディアがトランプ氏を右翼・過激派・犯罪人と貶めたように、左派メディアは尹大統領を右翼・過激派と貶めている。
しかしファクトチェックをしてみると、全くそうではないことが分かる。最大野党「共に民主党」は戒厳令を内乱罪と偽り弾劾を発議したが、検事・法律家出身の尹大統領は合憲かつ合法的に戒厳令を宣布、国会の議決により6時間後に戒厳令を解除した。
国会で尹大統領の弾劾は否決された。万が一弾劾されていたとしても、憲法裁判所では当然”戒厳令は合憲的・合法的”という判決が出ることになっている。
非常戒厳令を宣布した本当の理由は、今年4月10日に行われた総選挙が大掛かりな不正選挙であり、国会議席を192席も独占した「共に民主党」、野党の国会独裁と国政まひの事態を打開したい狙いがあった。野党は、大統領府の特活予算82億ウォンを全額削減した。これは大統領をするなというに等しい暴挙だ。文在寅政権時、従北反逆の大統領には特活予算96億ウォンを編成していた。
尹大統領の「緊急対国民特別談話」を要約して述べよう。
「私は大統領として、血を吐く思いで国民の皆様に訴えます。これまで国会は韓国政府発足後、22件の政府官僚弾劾訴追を発議しており、今年6月の第22代国会発足後も10人目の弾劾を進めています。
これは世界のどの国にも類例がないだけでなく、韓国建国以後にも全く類例がない状況です。
判事を脅かし、多数の検事を弾劾するなど、司法業務をまひさせ、行政安全部長官・放送通信委員長・監査院長・国防長官への弾劾の試みなど、行政府までまひさせています。国家予算を全額削減し、来年度予算から災害対策予備費1兆ウォン、子供ケア支援手当て384億ウォン、青年働き支援予算・深海ガス田開発事業など4兆1000億ウォンを削減しました。
さらに軍の初級幹部の給料と手当てや、当直勤務費の引き上げなど軍幹部の処遇改善費にさえブレーキをかけました。
予算までもひたすら政争の手段として利用するこのような共に民主党の立法独裁は、予算弾劾までも躊躇しませんでした。
今私たちの国会は犯罪者集団の巣窟となり、独裁立法を通じて国家の司法・行政システムをまひさせ、自由民主主義体制の転覆を企てています。私は北韓の共産勢力の脅威から自由民主主義大韓民国を守り、国民の自由と幸福を略奪している破廉恥な従北反国家勢力を一挙に排除し、自由憲政秩序を守るため、やむを得ず非常戒厳を宣布します」。
なお、今回の戒厳の実際のターゲットは国会ではなく選挙管理委員会だった。言わば「声東撃西」作戦だった。
国会には戒厳令宣布後、1時間半後に兵力50人が進入したのに対し、果川中央選管委には戒厳令宣布の後わずか2~3分で500人の戒厳軍が現れた。
戒厳軍の中には、多数のIT専門兵力がおり中央選管委情報管理局のサーバーと選挙資料を押収した。同時に、中央選管委の当直職員5人の携帯電話も押収。水原選管委研修院や、果川・京畿など一部の地方選管委の資料も押収した。
12月6日、「スカイデイリー」紙は「尹錫悦政府は憲政史上初めて選管委のサーバーフォレンジック(鑑識)および総選挙電算操作、不正の証拠をつかんだ」と報じた。
現行の制度では、最高裁判事と各級裁判所長が、中央選挙管理委員長と市道選挙管理委員長を務めている。したがって、これまで提起された数多くの選挙不正訴訟も裁判所で毎度棄却されていた。ただし戒厳の際には、裁判所の令状発行なしで押収、捜索が可能だ。
一方で、今年7月にトランプ陣営の韓米側近らが韓国の不正選挙の実態を秘密裏に調査。トランプ氏が不正選挙に巻き込まれないよう決定的な貢献をしたことが分かっている。彼らの訪問は、米大統領選挙の投票日まで秘密にすることにしたという。
韓米双方は、国内に暗躍する親中組織に関しても認識を共有したもようだ。
トランプ氏は来年1月に就任し、2020年に行われた不正選挙を徹底的に捜査・処罰する方針だ。国内外に大きな衝撃を与えた非常戒厳が、不正選挙疑惑を突きとめる契機になるものと期待されている。

高永喆(コ・ヨンチョル)
拓殖大学客員教授、韓国統一振興院専任教授、元国防省分析官。著書に『国家情報戦略』(佐藤優共著、講談社)、『金正恩が脱北する日』(扶桑社)など。


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