韓国の化粧品業界が日本市場に攻勢をかけている。日本の化粧品輸入額は2022年に韓国が国別で首位となり、年々注目度を増している。韓国政府が化粧品を「Kビューティー」と称し、Kポップや韓国料理と並んでブランドとして推進していることから、日本市場での浸透がますます進むとみられる。
「Kビューティー」浸透へ
韓国で20年以上運営している美容情報プラットフォーム「POWDER ROOM(パウダールーム)」は、韓国化粧品を実際に体験した人の忌憚のないコメントが評判となっている。韓国国内で約370万人以上の美容愛好家と約5400社の美容ブランドが参加し、韓国最大級の美容情報プラットフォームに成長。
訪日客向けにも
日本では約2年前からインスタグラムなどを展開していたが、運営元であるパウカンパニー(ソウル市江南区)は先月、日本支社を設立して本格進出を果たした。日本では韓国化粧品だけでなく、インバウンド(訪日客)向けに日本の化粧品の販売促進も図っていく。21日には都内で日本の化粧品事業者向けのセミナーが開かれ、韓国人などへのインバウンド向け販売戦略をアピール。来年春には新宿で、韓国と日本のコスメブランドの商品をそろえた期間限定店舗を出店する。
金貞恩最高経営責任者(CEO)は「美容大国とされる韓国だが、国内では日本の化粧品も人気が高い。日本では韓国化粧品とともに、インバウンド向けに日本の化粧品の販売促進も図っていく」としている。
韓国化粧品の輸入卸売を手掛けるKOLLECTION(東大阪市)は、22~25日まで東京・原宿で期間限定店舗を出店。各ブランドがサンプルや数量限定の製品を来場者に提供した。
同社は「ブランド認知度を高め、インフルエンサーとのコラボで効果的なプロモーションを展開する」としている。
市場回復鮮明に
矢野経済研究所によると、日本国内の23年度化粧品市場規模は前年度比4・6%増の2兆4780億円だった。財務省の貿易統計によると、23年の韓国からの化粧品輸入額は前年比23・8%増の959億6200万円だった。矢野経済研究所では、「日本国内の化粧品市場は回復基調が鮮明になりつつあり、インバウンド需要も順調に回復している。28年度の化粧品市場規模は23年度比10・6%増の2兆7400億円まで成長する」と予測している。
マーケティングリサーチなどを行うインテージの調査によると、日本人女性の23年の韓国化粧品購入額は313億円で、コロナ禍前の19年の51億円から約6倍増となっている。購入率でみると、23年は約2割となり、5人に1人が手に取っている。このうち10代と20代の購入率に限ると、3人に1人にまで高くなっている。
輸出額世界4位
韓国貿易協会によると、23年の化粧品輸出額は前年比6・4%増の84億6273万ドルで、歴代2位の輸出額を達成した。この額は、フランス(218億8955万ドル)、米国(110億7905万ドル)、ドイツ(97億5357万ドル)に次ぐ世界第4位の規模。13年からの10年間で輸出額は約7倍に成長している。韓国政府は化粧品産業を世界3大化粧品輸出国として育成するため、19年に「未来化粧品産業育成方針」を定め、本格的な支援に乗り出した。21年には育成方針を「Kビューティー革新総合戦略」として発展させ、技術革新から輸出支援まで取り組みを広げている。
ジェトロ(日本貿易振興機構)ソウル事務所の花輪夏海氏は「すでに世界的な地位を確立しつつあるKビューティー分野は、これまで培ってきた技術力を武器に、革新的で時代に沿った製品を提案し続けることで今後さらに成長すると見込まれる」と期待している。