近年、メタバースは次世代インターネットサービスとして注目を集め、多くの企業がこの分野に進出した。だが期待が先行する一方で、メタバース関連の成長は思うように進んでいないのが現状。韓国もいち早くこの分野に進出。韓国政府や企業は競争力を高めるため、多角的な取り組みを進めてきた。だが、韓国でも最近はメタバースに対する熱が冷めてきている。幕張メッセで開催された「第4回XR・メタバース総合展」に出展した企業などに韓国メタバース事情を聞いた。
メタバースとは、仮想空間を活用してリアルとデジタルの境界を越えた新たな体験を提供する技術を指すもの。
新型コロナの流行で非対面の仮想空間に注目が集まったものの、コロナの終息が見え始めると盛り上がった熱気が後退し始めた。
最近はメディアでも「メタバース」という言葉をあまり聞かなくなった。
韓国は、デジタル技術の導入と活用において、日本を含む多くの国々をリードしている。その背景には、国家戦略としてのデジタル化推進、優れたネット環境、そして民間企業と政府の協力体制が挙げられるが、メタバースの分野でもいち早く進出、強化を図った。
韓国政府は、メタバースを「デジタル新規成長戦略」の重要な柱と位置づけている。2021年には「Kメタバース戦略」を発表し、26年までに3兆ウォンを投入する計画を発表した。韓国のメタバース産業をグローバル市場での競争力ある存在に育てることにある。具体的には、中小企業やスタートアップの支援、専門人材の育成、法規制の整備などを含む。また、地方自治体とも連携し、地域ごとのメタバース活用モデルを推進してきた。
IT大手企業も、メタバースに注力してきた。ネイバーは独自のメタバースプラットフォームを展開。ユーザーはアバターを作成し、バーチャル空間で友人と交流したり、ブランドとのコラボレーションイベントに参加可能なものだ。カカオは、メタバースのソリューション開発に注力し、同社のエコシステムを拡張する試みを行っている。ゲーム企業であるNCソフトやネットマーブルも、メタバースゲームの開発を推進。アバターを使ったバーチャルアイドルなども出現した。
だが韓国でもメタバースに対する期待は低下した。
「世界や日本と同様に韓国でもメタバース分野の注目度は低くなった。そもそも”メタバース”という言葉自体がもう古いと思う」「新型コロナ禍の硬直した経済のなか、希望を持てる産業分野がなかった。非対面ビジネスということでメタバースへの期待が高まったが、その幻想が崩れた」「仮想空間を利用したゲームなどメタバースは、コロナ前にもすでにあった」など「メタバース総合展」に出展している企業でさえも見方は厳しい。
「メタバース分野が衰退した原因には、ChatGTPに代表される生成AI(人工知能)が出現したこともあげられる。これら新分野と連携する新しいフェーズに入ったといえる」「いまはXR(AR・VR・MR)など現実とメタバース(仮想空間)を融合させる技術が生まれてきている。メタバースという概念に囚われる時代は終わり、新技術をどうビジネス化していくかが課題」など、多くの韓国企業はすでに先を見据えた展開へと移行しているようだ。