文在寅政権当時、政府が国家の安全保障という基本的な責任を果たさなかったと指摘する声が出ている。一方で尹錫悦政権発足から2年6カ月が経過してもなお、この件に対する調査や捜査を行うとの情報は皆無だ。特に、安全保障の核となる「軍事情報」漏洩疑惑は明らかに検察の捜査対象であり、早急に調べを進めるべき国家に対する背任行為に他ならない。
(ソウル=李民晧)
「韓半島の人権と統一のための弁護士会(韓弁)」は22日に声明を発表し、「THAAD(高高度ミサイル防衛システム)その他軍事情報の流出等、文在寅政権の汚職と不正を清算しないかぎり韓国は民主主義でも法治国家でもない」と主張した。
弁護士らはまた、文在寅時代の安保政策に多数の疑惑があると指摘し捜査を求めた。
(1)北韓の金正恩にUSBを渡した件(2)中国にTHAADに関する機密情報を漏洩した件(3)3不1限(THAAD配備の制限、米国ミサイル防衛システムへの不参加、韓米日軍事同盟不可・THAAD運用の制限)の約束(4)脱北漁民の強制送還(5)脱原発政策(6)漂流した公務員の越北工作などを、その理由として挙げた。
北韓に対するスパイ罪の該当も
こうした中、2018年4月27日、文在寅前大統領が北韓の金正恩に渡したUSBに「3級国家機密」が含まれていることが確認された。当該USBについて文政権は「韓半島の新経済構想が収められている」と主張したが、韓国の原子力発電所に関する資料などの機密情報が含まれている疑惑も取り沙汰されてきた。国家機密を敵の首魁に渡したことが事実である場合、スパイ罪や利敵罪に該当する。
韓弁は声明で「大統領文在寅は、大統領朴槿惠を弾劾して失脚させた。大統領在任中は、前政権の『積弊清算』を主張し、閣僚らによる政策決定の過程や前政権の慣習的業務に対し厳しい法的基準を適用させた。厳格な道徳的・法的基準で相手を抹殺したにもかかわらず、文政権は法律を度外視し民主主義を破壊する『ポピュリズム暴圧政権』にも等しい」と主張した。
尹錫悦政権の「切れないナイフ」
検察は最近、文政権当時の高官らに対する捜査に一部着手し始めた。しかし、任期後半を迎えてようやく捜査に乗り出したという点は、尹錫悦政権の弱さでもあり、責任とも言える。
これに対し、韓弁は「捜査の遅れも悪の蔓延を助長することにつながる。文政権の深刻な反逆罪と個人の汚職において、現政権は任期後半に突入してもなお一つも解決にこぎ着けていない」と批判した。
このため、文在寅政権の犯罪に「切れないナイフ」で対応し追い込むことすらできないのでは、その能力を疑問視せざるを得ない。
文政権の犯罪疑惑に対し、このまま時間を引き延ばす形になれば、尹錫悦政権が掲げた「民主主義と法治を正す」という公約は「嘘」のまま任期の終わりを迎えてしまう。厳正な捜査は行われるのか。それが尹錫悦政権の評価を定める試金石となるだろう。
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慶尚北道城州郡のTHAAD基地。文政権は、機密情報を中国に漏洩した疑惑がもたれている