今回の米国大統領選挙で韓国と米国の左派寄りの言論は、トランプ氏を極右・犯罪者・デタラメとでっち上げ、事実を歪曲した報道を繰り返した。ファクトを検証してみれば、トランプ氏は酒・タバコを全くしない健全な経営人で、自力での成功を果たしたビジネスマンであり、卓越した国家経営能力と手腕の持ち主である事が分かる。
公務員は定年退職まで身分が保障されるので”鉄の炊飯器”と呼ばれている。仕事をほどほどにしてもきちんと給料が出るので”事なかれ主義”まで身についている。
しかし、企業経営者は一歩間違えて会社が倒産すれば社員たちと共倒れになるため、懸命に努力する習慣が身についている。これこそ、企業経営人出身のトランプ氏が公務員出身のバイデン・ハリス氏と戦って勝つほかなかった理由である。
今回の米大統領選挙は、常識的なトランプ対非常識なハリスの戦いになった。同性結婚と性転換手術の許容、1100万人の不法入国者の受け入れ、不法入国者への選挙権授与など民主党ハリス候補の常識外れの数々の仕打ちが、大多数の米国人への違和感を呼び起こした。さらに、バイデン政権はトランプ1期政権よりも2倍に暴騰した物価上昇についての具体的な解決策を提示できず、経済回復の代案がなかったのも敗因となった。
トランプ候補が”MAGA”(偉大な米国再建)をスローガンに不法入国遮断、物価安定、経済回復を叫ぶと、伝統的に民主党を支持してきた全米運送労組と鉄鋼労組がトランプ支持を表明。さらには斜陽化した製造工場が密集するペンシルベニア州を含む競合州7州で、圧倒的な勝利を収める結果になった。
選挙遊説中に銃撃を受けたが、トランプ氏は奇跡的に死を免れた。前回連載で指摘した通り、この事件をきっかけにトランプ候補を応援する岩盤層はもちろん、新たな支持層が増えて支持率を高めた。
しかし、左派寄りの言論はトランプ候補に対する事実無根の誹謗と、足を引っ張る報道を続けてきた。特に、トランプ候補を”ロシアのスパイ”と決めつけた。トランプ候補の狙いはロシアと北韓を味方に引き寄せ、中国をけん制するための切り札にする狙いがあるとみられる。トランプ氏ならではの戦略的な手腕であり、『孫子兵法』の「戦わずして勝つ」や「以夷制夷」の知恵であることが分かる。
1979年に米国が中国との敵対関係を清算、国交を樹立したのは宿敵のソ連を牽制することが最大の目的だった。その後、米国は旧ソ連を牽制するため貧しかった中国を豊かな国に育てあげた。
一方で、ソ連は米国の牽制と経済的圧力で経済が衰退し、15カ国に分離・独立して崩壊した。ところが、米国のおかげで豊かになった中国は、米国に逆らい敵対する関係にまで至ったのだ。
従って、今回は米国が中国に対するけん制や経済的圧力を強め、四分五裂させることに躍起になっているわけだ。トランプ氏の強力なリーダーシップで米国が強くなってこそ、中国・北韓・ロシアが米国を甘く見なくなるはずだ。米国が強くなれば、同盟国の韓国・日本も共に強くなる。
弱腰バイデンがアフガニスタンから撤退すると、ロシアが米国を無視してウクライナに侵攻。ハマスはイスラエルを奇襲攻撃した。一方で、中国は台湾への武力侵攻をほのめかし、弱腰バイデン政権を無視する姿勢を見せている。
選挙期間中、米国の主流言論はトランプ当選を妨害するため、事実を歪曲した報道を続けた。だが、イーロン・マスク氏が買収、経営しているX(旧ツイッター)ではファクトを拡大。全米放送局の10倍以上の影響力とインパクトを発揮、トランプ氏の勝利に決定的な貢献をした。
特に、大統領選候補者のケネディ氏(ケネディ元大統領の甥)はトランプ陣営に合流したが、イーロン・マスク氏とともに二人はもともと民主党の側に立った共通点がある。9月19日、イーロン・マスク氏は「もし不正選挙がなければ世論調査の根拠に照らすと”トランプが選挙人312票を得て、ハリスは226票にとどまる”ため、トランプが圧勝する」と予測していた。
イーロン・マスク氏の天才的な情報分析と状況判断が、トランプ氏の当選を正確に言い当てる結果になった。
高永喆(コ・ヨンチョル)
拓殖大学客員教授、韓国統一振興院専任教授、元国防省分析官。著書に『国家情報戦略』(佐藤優共著、講談社)、『金正恩が脱北する日』(扶桑社)など。