10日に5年間の任期の折り返しを迎えた尹錫悦大統領。その任期の半分を終え、経済政策に関する成果と課題が浮き彫りになっている。伊政権は2022年5月に発足して以来、経済の再生と構造改革を最重要課題として掲げ、さまざまな施策を実行してきた。だが、依然として多くの問題を抱え、成功と失敗の両面が明確に見え始めている。
尹大統領は7日に記者会見を開いて国民向け談話を発表した。そのなかで「残りの任期2年半は国民生活の変化を最優先にし、政府の力を集中する」と強調した。
尹大統領は物価・住宅市場の安定、小規模事業者・自営業者の支援、社会的弱者の福祉拡大などに言及し、「初心に戻ってもう一度始める」と述べた。また、半導体産業や人工知能(AI)などに対する政策支援を強化し、原発産業の完全な正常化も推進すると表明した。
また「今年の輸出が史上最高値を更新し経常収支黒字も700億ドルを越えるものと展望される」と強調。 合わせて「私たちの経済が成長するための構造的な改革」とし「4+1改革」(就任後、医療、年金、労働、教育の4大改革と人口危機克服)を推進する意志を示した。
国際経済の厳しい状況の中でも、韓国経済は一定の成長を維持した。特に半導体産業やバッテリー産業、IT分野は引き続き成長を続けており、韓国の主要輸出産業は依然として強固な地位を保っている。伊政権は、これらの分野に対する支援策を強化し、企業の研究開発投資を後押ししてきた。622兆ウォン規模の世界最大の「半導体メガクラスター」造成に着手。シンハンウル3・4号機(原子力発電所)の建設再開など原発のエコシステムを復元したことなども特筆すべき成果といえる。
所得に関しても昨年、韓国の1人当たりの国内総生産(GDP)が、日本と台湾を上回った。IMFが先月22日に発表した「世界経済展望報告書」では今年の韓国の1人当たりのGDP予想は1・6%増の3万6132ドルで、日本の3万2859ドルを上回っている。
一方で、伊政権の経済政策にはいくつかの重要な課題がある。最も顕著な問題の一つが、物価の高騰と生活費の増加。特に食品やエネルギー価格の上昇が国民生活に直結し、消費者物価指数は長期的に高止まりしている。
5日、10月の消費者物価が発表されたが、前年同月比で1・3%上昇、前月(1・6%)より縮小した。21年1月(0・9%)以来3年9カ月ぶりの低水準となったことは朗報だろう。
所得格差の拡大も大きな課題だ。経済成長を重視する一方で、低所得層や中小企業への支援が十分ではないとの批判もある。
特に、若年層や非正規労働者の雇用問題は深刻であり、賃金の格差や雇用不安が社会的な不満を引き起こしている。経済成長が進む中でも、格差が広がることで社会の分断が深まる懸念も大きい。
韓国は外部環境の変化も経済政策に大きな影響を与えている。世界的な金利上昇や中国経済の鈍化、米国との貿易摩擦など、外的要因が韓国経済にとって大きな試練となっている。特に、米中対立や半導体を巡る国際的な競争が激化する中で、韓国はその立ち位置を模索し続けている。伊政権は「経済安全保障」の強化を掲げ、サプライチェーンの多角化や技術革新を進めているが、国際政治の不確実性は引き続き韓国経済に影響を与えるだろう。特に米国ではトランプ大統領が再選したことで、米国の対韓政策が大きく変化すると予想される。国内では野党が多数を占める国会で法案が採択されず、経済政策が円滑に進められないという最大課題もある。
外部環境が不安定な中、韓国がどのようにして国際競争力を維持しつつ国内の安定を図るかが、政権の後半期の最も重要な課題といえる。