ドナルド・トランプ氏が第47代米国大統領に当選し、韓国産業界は大きな変化を迎えることになった。立法と行政を手中に収めたトランプ政権は、第1期(2017~20年)よりもはるかに強力な「アメリカ・ファースト(米国第一主義)」戦略を展開することは明らかだ。貿易に制限を課し、脱中国路線を推し進める見通しだ。これにより韓国産業界では、業種ごとに「チャンス」となるか「ピンチ」となるか、明暗が分かれることになる。
(ソウル=李民晧)
半導体企業にはチャンス到来か
世界情勢分析チームを抱える韓国の各大手法律事務所は、米国大統領選挙の分析報告書を発表し「トランプ氏の再選は韓国企業にとって大きなチャンスであると同時に脅威である」とその影響について論じた。
特に、韓国の主力産業である半導体企業が受ける影響に注目が集まっている。
韓国の半導体業界はトランプ氏の再選後、チップス法(CHIPS and Science Act)が縮小されるか、もしくは修正される可能性に着目している。半導体は韓国の基幹産業であり、米国の動向は極めて重要だ。
法務法人ユルチョンは「トランプ氏が中国を締め出し、半導体輸出の規制対象をスマートフォン、AI、電気自動車産業へと拡大するだろう。特に、プレミアム半導体市場において韓国企業への影響が予想される」との見解を示した。
ただし、チップス法のインセンティブは縮小される可能性がある。
法務法人太平洋は「チップス法の廃止、及び重要箇所の改正に至る可能性が高い。もし廃止、改正がされた場合、チップス法に基づく支援を期待して米国に投資した韓国企業はダメージを受ける可能性がある」と指摘した。
これにより、サムスン電子やSKハイニックスなど、米国内の設備を拡大した韓国企業が投資収益性の悪化を懸念しなければならない状況に置かれている。
一方で、法務法人ユルチョンは「チップス法はトランプ第1期政権時代に準備されたもので、中国を牽制する目的が大きかったため、インセンティブが縮小される可能性は低い」と見ている。
チップス法は、企業が米国現地に工場と研究開発施設を建てれば、生産補助金390億ドルとR&D支援金132億ドルなど計527億ドル(約74兆ウォン)を今後5年間支援することを骨子とする。
トランプ氏は先月25日(現地時間)のインタビューで、チップス法と外国企業を対象にした補助金支給を批判し、半導体に対する関税賦課を代替案として提示している。
自動車・2次電池はピンチ防衛費分担金の増額要求も
トランプ2期政権発足で打撃が既定事実化された産業分野もある。代表的なのが2次電池と自動車だ。国内大手の法律事務所は一斉に「トランプ氏がインフレ削減法(IRA)の廃止を公言した。先端製造税額控除(AMPC)の恩恵がなくなる場合、2次電池を生産する韓国バッテリー業界の収益性悪化は避けられない」と指摘した。
自動車業界も非常事態だ。トランプ氏は「普遍関税10%」の導入とともに、輸入車に最大100%の関税を課すと予告した。
米国は韓国自動車産業にとり最大の輸出国(約50%)であるため、関税引き上げの場合、現代自動車と起亜自動車をはじめとする韓国自動車業界は打撃を受ける見通しだ。
法務法人太平洋は「関税引き上げは価格競争力を弱め、米国内の現地生産を検討する必要性を高める」と説明した。
また、外交・安全保障分野でも変化が予想される。
トランプ氏はウクライナへの支援縮小、NATOの防衛費分担金増額要求など、自国の利益を優先する政策を実行していくとみられる。韓国に対しても在韓米軍の防衛費分担金の増額などを要求する可能性が高くなっている。
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6日午後、ソウル駅で市民が待合室のテレビを通じてドナルド・トランプ氏の演説を視聴している