韓日に共通の経済課題

魅力的な次世代成長産業の不在
日付: 2024年11月06日 10時49分

 韓国政府・企画財政部が発表した最新の経済動向報告書(グリーンブック)では、韓国経済について、「物価の安定傾向が拡大する中、輸出と製造業を中心に景気回復の流れが続いている」と総括されている。また、設備投資・サービス業を中心に緩やかな内需回復の兆しが見られる中、部門別の回復速度には差があると説明している。企画財政部は、サービス業の改善などを根拠に6カ月連続で、「内需回復の兆し」に言及したものの、好調の輸出とは温度差があるとの見方を示している。
韓国政府は物価について、安定傾向が拡大しているという先月の判断を維持した。9月の消費者物価は前年対比1・6%上昇し、上昇率は2021年3月(1・9%)以来となる1%台に低下し安定している。不確実性の要因としては、主要国の景気減速の懸念に原材料価格の変動性が加わっている。
IMFの韓国経済見通し
こうした状況下、割に科学的、客観的、中立的な国際機関であると言われている国際通貨基金(IMF)が10月に発表した最新の世界経済見通しで、今年と来年の韓国の経済成長率をそれぞれ2・5%、2・2%とし、従来予想を据え置いた。
韓国の今年の経済成長率見通し(2・5%)は7月の予想と同じであり、これはまた韓国政府(2・6%)、韓国銀行(中央銀行、2・4%)、経済協力開発機構(OECD、2・5%)、韓国開発研究院(KDI、2・5%)の見通しとほぼ同水準となっている。
来年の経済成長率見通し(2・2%)も7月の見通しと同じとなった。
株価と経済、株価と韓国経済
株価変動による企業の評価は一般的な手法の一つとなっている。しかし、株価は絶対的なものではなく、企業評価をする上で参考にする程度に扱っていくことが良いと筆者は考えている。否、筆者は昨今の、「株式運用によって資産倍増を!」といった日本政府も含めた日本の風潮には違和感すら覚えている。
即ち、株と言うものは本来、「企業を育て、産業を育て、その上で国家経済を健全に発展させる一つの道具として構築されたシステムである」と筆者は考えているからであり、「株式運用によって利益を得よう」といった考え方に、納得が出来ないでいる。
こうした中、世界の半導体関連企業の株価に焦点を充てた見方が、半導体強国となった韓国から出ているので参考にしてみたい。韓国のマスコミで示された論調をまとめてみると、以下の通りとなる。
《韓国の株式市場が中国本土、インド、台湾など新興国と比べても存在感を示せない理由は、海外の投資家から注目を集める魅力的な企業が不足しているためである。ここ20年余り、韓国経済で大きな比重を占めてきた三星電子、現代自動車のような大企業に追随する第2、第3のグローバル企業を育成出来ず、未来成長企業の不在が定着してしまっている。
三星電子の独走が慢性化し、半導体株にピーク説が囁かれる度に韓国の株式市場ばかりか経済全体まで揺らいでしまい、更に後進的な企業支配構造、現在論議を呼んでいる金融投資所得税など株式市場が低評価される要因も存在する。こうしたことが、外国人投資家の注目を浴びない背景となっている》
さて、こうした韓国での見方を見ていると、日本も株価を意識した経済・産業戦略を考えていくのであれば、「次世代の成長産業が不在である」という点を解消する必要があり、日本政府には安倍政権時代に言われていた、「三本の矢」の一つであり、未だに達成されていない成長戦略の具現化、即ち、「先ずは成長戦略をしっかりと構築、その中で新たな成長産業、成長企業を育成していく」という戦略について具体策のある構築を期待したい。
以上、少しでもご参考になれば幸いである。
(嘉悦大学副学長、愛知淑徳大学名誉教授 真田幸光)


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