高永喆 韓半島モニタリング 第34回

焦る金正恩独裁権力〝終わりの始まり〟
日付: 2024年10月22日 13時26分

 1日、尹錫悦大統領は国軍の日記念式演説で”もし、北韓が核兵器使用を企図するなら、韓国軍と韓米同盟の決然として圧倒的な対応に直面することになるでしょう。その日がまさに北韓政権の終末の日になるでしょう”と言及した。
ちなみに、”韓国の主敵は北韓住民ではなく、金正恩一人だけを取り除くこと”だと述べた。
その直後、金正恩は軍事綜合大学創設記念式の演説で”私たちは率直に言って、大韓民国を攻撃するつもりは全くありません。意識することでさえも鳥肌が立ち、その人間たちと向き合いたくもありません”と言及した。これこそ、金正恩が尹錫悦大統領の警告を怖がって焦っている証である。
金正恩は焦りや不安、強迫観念から、南北関係を遮断して金氏王朝独裁体制の維持に血眼になっていると思われる。
ちなみに最近、金正恩は南北に繋がる道路と鉄路を破壊して現代版鎖国政策で孤立を招いている。
また7日、北韓は国会に当たる最高人民会議で統一関連条項を削除、憲法を改正したものとみられる。「自主、平和統一、民族大団結」という祖国統一の3大原則は、党の基本路線であるにも関わらず、憲法を改正したというわけだ。
金正恩がこのように南北統一を放棄、対南敵対路線を強化する理由には、50倍以上の南北経済格差や韓流拡散による住民の動揺を防ぎ、国内の結束を固めるためだ。金正恩は長期世襲体制が限界に直面するや、好転が見えない不安で厳しい状態から抜け出すための出口戦略を取っている。
トランプ前大統領は在任中、イラン軍最高司令官ソレイマニを斬首作戦で除去したことがある。ちなみに、金正恩を支える側近は政策提言で「伝統的に好戦的な米国の民主党はハリス候補がトランプ候補に負けるのを防ぐために、将軍様の排除作戦を実行して民主党ハリス候補の支持率を上げる可能性があります」と助言するだろう。
欧米や韓日など、自由陣営のトップの側近は政権が替わると全員が退任するか、交替するケースが多いので、業務の持続性と専門性に欠けている。
しかし、北韓の外交官や党官僚は長期間にわたって職務を積み重ねるから、全員プロの専門家として国際情勢を鋭く分析している。彼らが分析・判断した賢い政策を指導者に提言していると考えられる。
北韓は、70年代初頭からイスラムテロ組織をはじめパレスチナ、ハマスとヒズボラなど武装組織を軍事支援している。特に北韓はウクライナ戦争でロシアに砲弾とミサイルを大量輸出しており、1万2000人の特殊部隊兵力を派兵している。
ちなみに、ウクライナを支援するNATO同盟国、フランス軍戦闘機が飛来して韓国・日本と連合訓練を実施したことがある。また、北韓はイランと太いパイプを持っているためイスラエルからの敵対感が高まっている最中だ。
したがって、欧米は金正恩排除作戦を立案、実行する可能性が高まっている。北韓は唯一独裁体制だから金正恩一人のみを排除すれば全てが収まるはずだ。それこそ、金正恩の大掛かりな火遊びによる戦禍を事前に防ぐ近道だろう。
金正恩は昨年12月28日、労働党中央委員会で、「南北関係はもはや同族関係ではなく、敵対的な2国間関係、戦争中の二つの交戦国関係に完全に固定された」「有事の際、核武力を含むすべての物理的手段と力量を動員し、韓国の全領土を平定するための大事変準備に拍車をかけなければならない」と対南脅迫、恐喝を繰り返した。
万一、北韓が戦争挑発を試みる場合。その兆しは米韓連合軍の情報資産である偵察衛星、偵察機、暗号解読、通信傍受情報をクロスチェックすると、2~3日前から正しく情報判断が出来る。したがって前もって先制攻撃が出来る仕組みになっている。
「絶対的権力は絶対に腐敗し、絶対崩壊する」という歴史の先例に照らして見れば、金正恩独裁権力はもはや”終わりの始まり”の兆しが浮き彫りになっていることが分かるだろう。

高永喆(コ・ヨンチョル)
拓殖大学客員教授、韓国統一振興院専任教授、元国防省分析官。著書に『国家情報戦略』(佐藤優共著、講談社)、『金正恩が脱北する日』(扶桑社)など。


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