業績を下回り「サムスン危機説」に現実味

技術革新と経営判断に遅れ
日付: 2024年10月16日 09時34分

 韓国最大手の企業・サムスンが謝罪文を発表した。業績が市場の予測を下回ったことに対し株主に向けて発信されたもので、同社が業績不振を理由に謝罪文を出したのは創業以来初めてのことだ。水面下でささやかれていた「サムスン危機説」が現実味を帯びてきた。          (ソウル=李民晧)

 

 サムスングループの中核はサムスン電子だ。1969年の創業以来、55年間にわたり順調に成長を続け、気がつけば韓国の全企業の中でトップに上りつめていた。しかし、ここにきて上り調子かと思われたサムスン電子から謝罪文が発表されたのだ。
謝罪文は、今年第3四半期の業績低迷により、顧客と投資家、従業員に向けて発信された形だ。サムスン電子における第3四半期の営業利益は9兆1000億ウォンで、市場の予測「10兆8900億ウォン」を大きく下回った。今回、謝罪を行ったのはDS部門(半導体事業部門)のチョン・ヨンヒョン副会長だ。「半導体事業の責任者である」というのがその理由だが、会社の代表である李在鎔会長による謝罪ではなかったことから、市場では「誠意が足りない」との指摘が上がった。「サムスン電子危機説」は今年の春頃から取り沙汰されており、実際、複数の項目で業績不振の兆しが見えていたが、李在鎔会長は無言を貫いていた。

 労働組合が初のスト決行

労働組合の結成は法的に保障されているが、サムスンは労働組合の活動がない企業として知られている。創業者の李秉喆会長時代から「労働組合は作らない」という原則を掲げてきたからだ。組合の結成が法的に保障された後も、組合の存在こそあるものの活動自体は行われていなかった。
しかし半世紀以上続いてきた伝統が途絶えた。今年6月、サムスン電子の組合員がストライキを起こしたのだ。組合員の数も急増している。昨年に比べ、今年は3倍にまで増えた。組合員はサムスン電子の従業員12万人のうち、20%を超える2万8000人に達する。
李会長に対する「お飾り会長」という誹謗もリーダーシップの揺らぎを鮮明に表している。経営上の重要な決断は別の実権者が行い、李会長はそれに従うだけ、との疑念が拭えない状況だ。労働組合はストライキで「李会長はサムスンの実質的なオーナーではない」と指弾した。また、李会長が8年間にわたり経営・財務関連の裁判に携わってきたことで企業文化が衰退した、との声もある。李秉喆、李健熙といった先代会長のようなカリスマ性に欠ける、とも言われている。

 揺らぐ半導体トップの地位

サムスンはメモリー半導体で世界シェア1位を誇るが、ファウンドリー(半導体の委託生産)首位の企業は台湾のTSMCだ。今年、サムスンは米国市場に対し、過去最大規模となる55兆ウォンの投資を行った。それでもTSMCとの技術格差は縮まらない。ファウンドリー分野の赤字は2兆ウォンに達し、人員削減を余儀なくされている状況だ。
メモリ分野も危機に陥っている。2019年、サムスンがHBM(高帯域幅メモリ)研究開発チームの解体を決定すると、その後SKハイニックスが同分野の成長株として急浮上した。サムスンはHBM3E8段を生産しているのに対し、SKは現行のHBMにおける最大容量36Gbを実現するHBM3E12段を開発した。これは世界初となる新技術だ。また、コンピューティングインフラ企業NVIDIAはSK製品を受託する形となり、サムスンは市場における優位性を奪われてしまった。
サムスンの危機は、「経営判断の行き詰まりとイノベーションに後れをとったことによる自業自得」とも指摘されている。だが、サムスンの危機は一企業の難局として流せるものではない。韓国経済の約20%を占めるサムスン電子の危機はすなわち、韓国経済の盛衰に直結するからだ。今年7月、1株およそ9万ウォンだったサムスン電子の株価は、10月10日現在は5万ウォン台にまで急落している。

 

サムスン電子瑞草社屋を通り過ぎる社員たち


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