韓国で若い世代を中心にJPOPアーティストの人気が高まっている。『スラムダンク』や『ポケットモンスター』の人気が示すように漫画やテレビアニメ、文学はすでにプレゼンスを確立していたが、日本の音楽は一部マニア層のものだった。だが、最近は日本の注目アーティストの韓国公演チケットは数分でソールドアウトするほど人気となっている。
日本ではKPOP人気が定着して久しい。ファン層も、冬のソナタなどの韓流第1世代から最近のBTS世代まで老若男女と幅広い。
これに対して、韓国でのJPOPの広がりは限定的だった。「歌詞のある日本音楽」が開放されたのは2004年になってからで、JPOPの場合、聴いているのは少数のマニアにとどまっていた。特に高年齢層は日本文化に好感を持ちながらも、歴史や政治的問題による心理的な抵抗感も残っていた。さらに文在寅政権下での官製反日政策「NO JAPAN」運動の影響は大きく、日本のコンテンツを楽しむ雰囲気が社会からなくなった。
だが、尹錫悦政権発足以降、風向きが変わった。両国関係を改善しようとする尹政権下で対日ムードも一変、日本のアーティストの楽曲を聴く人が爆発的に増えている。
最近、韓国で大きな反響を呼んだのが、松田聖子の大ヒット曲『青い珊瑚礁』だ。「NewJeans」のメンバー・ハニが6月に東京ドーム公演で披露したことから火が付いた。同曲については、4月に韓国で放送された歌番組「日韓歌王戦」の中で、日本チームが披露したことも人気を呼ぶきっかけとなった。
日本人アーティストによる韓国公演が増えていることも注目される。中でもひときわ反響が大きかったのが、昨年12月にソウルで行われた「YOASOBI」の公演だ。チケットは即完売、大盛況のうちに終了した。「YOASOBI」のソウル公演のライブ映像はYouTubeでも見ることができるが、ヒット曲の『群青』が演奏されると、日本語で大合唱するファンたちの声が会場に響き渡った。観客が心からライブを楽しんでいる様子が、動画からでも感じられる。歓声もほとんどが日本語で、韓国で行っていると知らなければ、日本公演だと勘違いするほどだ。ソウルの真ん中で、日本のアーティストに熱狂し、共に日本語で歌う。以前の韓国では考えられないことが起こっている。
「YOASOBI」だけではなく、「King Gnu」「優里」「Official髭男dism」の韓国公演のチケットも数分で完売。ソウル郊外のコンベンションセンター・KINTEX HALLで、11月に開催される3日連続ライブイベント「WONDERLIVET 2024」には「AKB48」「新しい学校のリーダーズ」「CreepyNuts」など多くの人気JPOPアーティストが出演する。
『韓流で読む韓国文化』の著者で韓日音楽事情に詳しい崔貞児氏(国士舘大学/東京女子大学非常勤講師)は、韓国でJPOPの人気が高まっていることに対し「日本で韓流の人気がドラマから始まり、KPOPに拡大したように、今のJPOPの人気は日本のアニメやゲームなどの人気から派生したものだ。まだ主流とは言えないが、歴史や政治とは別に柔軟に考える若い世代が社会の中枢になる頃には、JPOPの人気がさらに広がる可能性も十分にある。今後はJPOPの流行を超え、日韓関係にも良い影響を与えるのではないかと期待している」と語った。
「YOASOBI」の『群青』に「好きなものを好きだという 怖くて仕方ないけど」というフレーズがあるが、政治主導の反日・嫌韓などで、「好きなものを好きと言えない」社会にしてはいけない。だが、日本でのKPOP人気、韓国でのJPOPに熱狂する姿をみれば、若い世代は政治や歴史を乗り越え新しい韓日関係を作ってくれるのではと期待が高まる。