東京測地系→世界測地系

中韓関係に変化の兆し
日付: 2024年10月01日 10時43分

 韓国政府・企画財政部が公表した「経済動向報告書(グリーンブック)」では、最近の韓国経済について、「物価の安定傾向が拡大する中、輸出と製造業を中心に堅調な景気回復の流れが続いている」との総括がなされている。
また、先月に続いて「輸出・製造業中心の景気回復とそれに伴う緩やかな内需回復の兆しを見せている」との判断も示された。ただし、部門別に回復速度に差があるとして、輸出好調による景気の好循環の効果がまだ十分に現れていないとの見方も示されている。筆者の見るところ「斑模様の韓国経済」であることは間違いない。
また、韓国政府系シンクタンクである韓国開発研究院(KDI)が発表した「9月の経済動向」では、韓国経済について、「高い輸出増加傾向にもかかわらず、高金利基調により内需回復が遅れ、景気改善が制約を受けている」と総括されている。
企画財政部は今年5月から、韓国経済は輸出の回復傾向に支えられて内需が回復の兆しを見せていると分析している。これに対して、KDIは、「輸出が好調にもかかわらず、小売販売や建設投資の不振が続くなど内需の回復が可視化されていない」と説明している。
筆者も韓国の現状を調べてみると、このKDIの分析結果が、韓国経済の実態を示す状況であると考えている。いずれにしても、参考にしておきたい。
さて、こうした経済情勢下、韓国は新たな中韓関係を模索、中国本土も韓国を取り込み、日米韓の関係にくさびを打ち込んでくる可能性はある。今般、日本政界の実力者の一人である自民党の二階元幹事長が訪中した際にも、習近平国家主席は二階氏とは会談をしておらず、こうしたことから見ると、中国本土は日米関係を睨みつつ、今も日本を取り込むチャンスはあまり高くないと見ているのではないかと思われる。
一方、韓国に関しては、中国本土政府は「野党勢力に食い込むチャンスが大きい」と見る中、韓国国内で与野党トップの会談が行われ、潮目の変化も見られることから「韓国取り込み作戦」が今後、活発化する可能性もあると、筆者は見ている。
そしてまた、米国・バイデン政権後の読みが難しい中、「日米韓連携」が続くのか否かについての、見解の差も見られ始めており、韓国国内でも、「もう少し、中国本土との関係強化を図っておいてもよいのではないか」との声が、最近は出始めてきていると聞いている。
こうした中韓関係について、韓国国内では「薫風が吹いている」との表現まで見られ始めており、こうした背景を巡っては、「中国本土政府のグローバル戦術の修正がある」という分析が示されている。
即ち、韓国国内では、中国政府当局が露骨な強圧戦術は反中感情を煽るばかりであったと判断して、国際社会における世論管理に入り、韓国との対話も復元させているという見方が示され始めているのである。
また、こうした中韓外交関係の議論が韓国国内で展開される中、韓国財界には、中国本土との関係改善を意識しつつも、警戒感も示されている。
ドイツ・ベルリンで開かれた家電展示会「IFA2024」で、LG電子のチョ・ジュワン社長は中国本土への警戒心を露わにした。チョ社長は「中国本土のTCLやハイセンス(海信)を見ると、かなり追い付いてきた。中国本土は今や見下す対象ではなく恐れの対象となっている」とコメントしている。
大量生産大量販売のマス・ビジネスでは中国本土にはなかなか敵わず、そもそも中国本土企業を下に見るという発想が誤りであり、プレミアム市場でライオンシェアを保ち続けることも容易ではない。
そして、プレミアム市場戦略に関しては、日本勢の巻き返しを日本全体として支えるべきである。韓国勢の出方とともに、筆者としては、日本勢の巻き返しも期待している。
(嘉悦大学副学長、愛知淑徳大学名誉教授 真田幸光)


閉じる