各民団地方本部が朝総連への警戒を強めている。先月19日の地方団長会議でも注意喚起された。昨年末から今年にかけ、北韓当局は韓国を敵対国と規定し統一を放棄。その影響は最近より顕著だ。現在の朝総連の姿勢を冷静に見極め、立場の違いを把握した上で組織的な対策を図るのが最善だろう。
従北・主体思想派に警戒
先月19日、都内の韓国中央会館で開催した今年度後半期「全国地方団長・中央傘下団長会議」の場で、あらためて朝総連への警戒を喚起、再確認する一幕があった。
現状、民団の規約の中に”朝総連に所属する人間と接触してはいけない”といった直接的な内容は盛り込まれていない。中央本部の関係者によると、「あくまで各地方本部に『朝総連関係者と同席することのないように』との業務連絡を行い、共通認識として持っている」に過ぎない。
■北韓の「韓国敵対」余波
一方で、昨年末から今年にかけて北韓の金正恩総書記は韓国を敵対国と規定、統一を放棄する政策を次々と打ち出した。その影響からか、南側住民を「同胞」とし、「統一」を志向すると書かれた石碑などの文言・内容までが塗り替えられているようだ。それらの石碑が金日成・金正日の遺訓であったことは言うまでもない。
そのようななか北韓当局は在日同胞への期待値を高めているようで、8月から訪北していた卒業年次に該当する朝大生らの一団(引率した朝総連関係者含む)が先月中に帰郷している。
北韓当局が統一放棄を打ち出したその矛先は、韓国だけでなく在日韓国人社会まで射程に入れていると考えるべきだ。彼らが放棄した「統一」を肩代わりできるのが韓国側だけになってしまい、韓国でも日本でも、いわゆる「従北」に与する勢力が最近、存在感を増している。
都内の警察関係者によると、現状で朝総連の動きを警戒して民団の警備を強化するといった動きはない。
■地方で跋扈する朝総連
ある地方民団関係者によると、朝総連関係者の民団施設内への立ち入りや、内通者と声をはばかることなく金日成の功績について語り合う場面まで目撃されている。今年に入ってから似たような事例が頻発している。同じ境遇にある別の地方民団からの指摘も本紙に寄せられており、北韓当局が打ち出す影響力の大きさを、自由民主主義陣営側が行使できていないという歯がゆさがある。
一方で、地方民団の例をみても明らかなのは、北韓が選択している共産全体主義の根源に当たる、主体思想を信奉している従北・主体思想派である韓国側の人々が、問題をより深刻にしている点だ。日本の社会学系の市民団体などが従北・主体思想派の姿をまとっているというケースもあり、韓日で協力しなければ対応が難しい事案となりつつある。
■組織として選択が必要
また関係者によると、「民団に所属していながら従北に加担する人のいる一方で、朝総連に属していても主体思想を嫌悪している人もいる」という。実情に照らして、個人レベルの付き合いの交流が在日社会の各地であり得るとしても、それが組織として、「(地方民団によっては)自由民主主義を捨てて共産全体主義を取るのもあり得る」と許容してしまうとしたら、やはり問題だろう。
いま民団は、朝総連への向き合い方を迫られていると言える。中央本部の関係者は「『朝総連関係者と同席することのないように』との業務連絡を行ったのは、かつて延坪島砲撃事件(2010年)があり北韓への警戒を強めた時期に打ち出したもので、もう10年近く更新していない。最近入団した人たちから『知らない』と言われるのも頷ける。近く委員会で諮った上で、対策として打ち出していければと思う」と前向きな姿勢を示す。
さまざまな民団と朝総連の立場の違いを明確にし、その違いを把握した上で、組織的な対策を図っていくべきだろう。