大阪南部の鶴橋市場は、韓国の伝統市場にそっくりだ。市場の入り口からキムチや味噌のにおいが漂うあたり、紛れもなく韓国の市場そのものといえる。秋夕(中秋節)や正月などの節目に多くの人で賑わう鶴橋は、京都や奈良、和歌山、岡山など他県から来た同胞との再会の場ともなっている。しかし、鶴橋市場の元祖である韓国では、次々と伝統市場が姿を消している。秋夕シーズンにもかかわらず、伝統市場は活気を失っていた。人々は大型スーパーマーケットやネットショッピングで秋夕の食材を購入する。コロナ禍以降における物価の高騰や不況の余波が重なった結果、客足はさらに鈍くなった。
小商工人市場振興公団の資料によると、今年8月現在、韓国内の伝統市場は計1388カ所だ(昨年末は1408カ所)。わずか8カ月で20カ所も伝統市場が閉業に至った。伝統市場の現状は、空室率の高さが物語る。地方の場合はさらに深刻で空室率が30%台に達している市場もある。
伝統市場の数は人口減に伴い、今後さらに縮小していくものとみられる。統計庁の「伝統市場の部門別実績と見通し」によると、今年9月における伝統市場の景気見込みBSIは88・7で、昨年同期比18・7ポイント下落。BSIは「企業の景気指数」を示すもので、100を基準としている。これを下回る場合、景気が悪化する見込みのほうが優勢であることを意味する。伝統市場の売上げと購入顧客数の見込み値もそれぞれ90・2と91・1で、コロナ禍と似たような結果となった。
このように韓国で伝統市場の数が減少している要因としては、施設の老朽化や駐車スペースの不足問題などが挙げられる。また、伝統市場は高齢者が集う場所として認識されており、利用者層に偏りがある。商品ラインナップに多様性がない、といった指摘も後を絶たない。
一方で、いまだ活気に満ちた伝統市場も存在する。ソウル広蔵市場と清涼里の京東市場だ。安価でおいしい飲食店が並び、新鮮な野菜や果物が手に入ることで知られた結果、若者や外国人の訪問が増加し、新たなホットスポットとして賑わいをみせている。
(ソウル=李民晧)
賑わうソウルの清涼里市場