セキュリティーが不可欠となる軍隊で、情報漏洩の要因となり得る中国製の閉回路(監視カメラ)を設置していたことが判明し、このほど撤去されたことが明らかになった。選挙管理委員会の開票機に中国製を使用していたのと同様の問題が韓国軍で起きたことになる。
(ソウル=李民晧)
今回、軍当局が撤去した中国製監視カメラは全部で1300台だ。機器の部品は中国のサーバーと接続しており、リアルタイムで撮影された映像がそのまま中国側に流れた可能性がある。軍当局は、中国製監視カメラによる情報漏洩が技術的に可能であることを認めながらも、実際に情報流出には至っていないとの見解を示している。
だが、その発表を鵜呑みにするわけにはいかない。当該監視カメラは2014年の納品以来、長いものでは10年以上も使われてきたからだ。過去10年分の情報をすべて追跡できるのか、さらには技術的にハッキングの有無を解明することが可能なのかと問われれば、返答に窮するのは明らかだ。
軍当局の説明からは別の疑惑も生じる。今年7月末、陸海空の全軍に納品された装備品を情報機関と共に確認する中で中国製品が交ざっていたことが判明した、というものだ。中国製の「スパイカメラ」であったにもかかわらず、納品業者が「国産」であると偽った、との説明も加えた。軍当局は、当該監視カメラが非武装地帯(DMZ)などを監視する警戒作戦用ではなく、訓練場と部隊のフェンスなどを監視する目的で使用され、インターネットとは接続されていないため、流出した映像はなかったと主張している。
しかし、納品時の確認を怠り、スパイカメラを設置していたという事実は、いかなる理由を並べたとしても納得できるものではない。民間人の取引においても、このような不手際はそうあるものではない。
軍隊は、部外者の立ち入りを完全に遮断している保安区域だ。軍事施設における情報漏洩の可能性がわずかでもあるとすれば、中国製スパイカメラの設置は決して許されるものではない。韓国軍部隊の映像が、中国を経由して北韓に流出しなかったという保証はどこにあるのかと首をかしげざるを得ない。
欧米主要国は中国製を規制
発覚した当該監視カメラには、マルウェアを仕掛けることができる中国のIPが割り当てられていた。しかし、さらに深刻なのは、同じような事案は今回が初めてではないという事実だ。20年にも、海岸警備用の監視カメラが国産に偽装された中国製であることが判明した。当時も部品の中に中国のサーバーと接続したマルウェアが発見され、韓国軍の軍事機密である映像情報が流出したのではないか、などと懸念された。その頃から4年も経過した時点で軍の監視カメラに対する調査が行われたという点で、軍のセキュリティー意識と規律の低下は非難を免れない。
すでに欧米の主要国では、中国製を阻止する法整備から実行までを完了している状態だ。米国は19年、国防授権法を通じて軍や政府機関に中国製監視カメラの調達を禁止し、英国も22年、主要セキュリティー施設で中国製監視カメラの使用を禁止した。豪州も昨年、政府の庁舎内に設置された中国製監視カメラを撤去した。世界の主要各国が安全保障上の理由で中国製通信装備やドローンなどの使用を規制している。
軍当局は問題の納入業者に対し、30億ウォン相当の賠償金を請求すると明らかにした。「国産であると騙された」という苦しい言い訳をカバーするための対策なのだろうか。中国製を堂々と軍に納品した業者に限らず、一連の問題に関わった軍幹部らに対しても徹底的な調査が求められる。
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京畿道坡州市接境地域の韓国軍哨所