韓国企業の独自技術が海外に流出するケースが相次いでいる。直近5年間の被害額だけでも25兆ウォンに達する。これは摘発された額に過ぎず、実際の被害額は2倍以上に達するものとみられている。中でも、流出が多発しているのは国の基幹技術だ。韓国の産業競争力を弱体化させる最大の脅威として産業スパイ問題が浮上している。
(ソウル=李民晧)
技術の流出において最大の被害を受けているのがサムスン電子だ。韓国の企業ランク1位、厳重なセキュリティで有名なサムスン社が自社技術を盗まれるケースが多いという事実には驚かざるを得ない。
ソウル警察庁産業技術保安捜査隊は最近、20ナノ級DRAMを製造する上で用いられるサムスン電子の独自技術「ボルツマン(コード名)」が、中国の半導体企業「成都高真科技(CHJS)」に不正なルートで渡った事実を明らかにした。「ボルツマン」を中国企業に流出させた人物は、サムスン電子の元役員と技術開発者(主任研究員)であることが判明し、彼らは警察に逮捕された後、検察に送検された。彼らはまた、政府が「国の重要技術」に指定した「半導体工程総合手順書(PRP)」と「最終目標規格(MTS)」なども中国側に流した。今回の技術流出による経済的損失は、現在までに確認されているだけでも4兆3000億ウォンに達する。
サムスン電子が技術を盗用されたケースは過去にもある。2018年8月には、サムスン電子の元常務と20~30年の経歴を持つ研究員3人が、国内のサムスン半導体工場の「BEDデータ」(クリーンルームを維持するための最適温度、湿度、照度などの数値)と、中国西安のサムスン半導体工場の設計図、工程表を流出させた。彼らはこれらの資料を元に中国で複製用の工場を作ろうとして摘発された。
20年にはサムスン電子子会社の研究員が、価値評価額710億ウォンの半導体洗浄技術と設備を中国メーカーに流出させた。22年には半導体システム技術が中国と米国に流出した。
月日を経て判明したケースもある。今年1月、18ナノ級DRAMの半導体プロセス情報が、中国のDRAM製造企業「CXMT」に流出した事件は16年に発生したもの。この事件による被害額は2兆3000億ウォンに達する。
国の経済・安保にも影響
技術の流出は、韓国の産業競争力を弱体化させるリスク要因だ。国家情報院によると、18年1月から5年間に摘発された産業技術の海外流出事件は計93件で、企業の被害額は25兆ウォン規模に上るという。摘発された流出事件(93件)のうち3割(33件)は「国の重要技術」だった。国外に流出した場合、国の安全保障や経済発展に悪影響を及ぼす可能性がある。
政府はようやく重い腰をあげ技術流出に対する罰則を強化した。最高裁判所の量刑委員会は、国の重要技術を海外に流出させた場合、最大で懲役18年の刑を宣告できるよう量刑の基準を強化した。
サムスンをはじめとする韓国企業の技術流出は、当該企業の被害という枠を超え、国家経済に深刻なダメージを与える恐れがある。しかし、罰則の強化が特効薬となるか否かは未知数だ。法改正はもちろんのこと、企業文化と一人ひとりのセキュリティ意識の向上も伴わなければならない。
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ドイツ・ベルリンで開かれた欧州最大の家電展示会「IFA2024」。サムスン電子の展示館