インバウンド(訪日観光客)消費がV字回復している。日本でも有数の繁華街である東京・新宿では、ライブ・エンターテインメントショー、ダイバーシティー(多様性)をコンセプトとしたホテル、バーやアミューズメントを案内するツアーなど、訪日客向けのビジネスが活気づいている。
マルハン東日本はインバウンド向けライブ・エンターテインメント事業に参入した。忍者、花魁、歌舞伎といった日本の伝統文化を表現した「SHINJUKU NINJA LIVE SHOW」を8月から東京・新宿歌舞伎町で定期開催。連日、訪日客で賑わっている。
同社が、イベント運営のTryHard Japan、自治体などで構成された日本忍者協議会とともに、企画製作した。
非日常を創造
演じられるのは、日本の伝統文化として訪日客にも人気の忍者、花魁、和太鼓など。歌舞伎囃子方の田中傳次郎氏が演出した。中世から伝わる忍者の高い精神性、江戸発祥の歌舞伎の情熱的な演技、花魁の妖艶で美しい衣装、和太鼓の迫力といった伝統芸能の様式美のほか、照明や映像、音響によって非日常空間を創造することで、観衆を新たな体験と感動にいざなう。
ぴあ総研が発表した2023年ライブ・エンターテインメント市場規模調査によると、前年比21・3%増の6857億円となっている。20年から続いたコロナ禍の影響による市場低迷を乗り越え、19年の水準を上回り、過去最高を更新した。30年には7360億円に拡大すると予想している。
マルハン東日本の森部浩司副社長は「コロナ禍が明けて訪日客が多くなっている。日本にしかない質の高いコンテンツを提供し、インバウンド需要を喚起したい」と話している。
公演には、和牛すき焼き弁当とドリンクが付くほか、演者との記念撮影も行える。上演は月~金の正午から午後1時30分、午後3時から午後4時30分、午後6時から午後7時30分。前売り券8000円。当日券の販売もある。
歌舞伎町に隣接した新大久保のホテル、「CEN DIVERSITY HOTEL&CAFE」は、「百人百様の生き方を尊重し、人種や国籍、宗教、性別にとらわれず、すべての人に寄り添う」をコンセプトとした「東京初のLGBTQフレンドリーホテル」と称している。
LGBTQ対応
スタッフは国籍や性別を問わず採用し、トイレは性別で分けていない。言葉の壁に対しては、複数言語に対応したチェックインシステムを導入し、日本語が分からない人でもスムーズに手続きできるようにしている。
多言語で街案内
訪日客向けに新宿を案内するのが、歌舞伎町を中心に飲食店など約30店舗を運営するSmappa!Groupが提供する「歌舞伎町コンシェルジュ」。歌舞伎町で事業を展開している強みを生かし、同社の飲食店従業員らがバーやアミューズメントなどを中心に、顧客の趣味嗜好に合わせて案内する。これまでにホテルや旅行代理店からの紹介で、ゴールデン街巡りや、子供連れ向けのゲームセンター巡りなど、要望に応じて実施している。英語、中国語、日本語に対応している。
観光庁のインバウンド消費動向調査によると、24年4~6月期(1次速報)の訪日外国人旅行消費額は2兆1370億円で、前年同期比73・5%増。コロナ禍前の19年同期比でも68・6%増と推計され、好調に回復を果たしている。
忍者、花魁、和太鼓といった日本の伝統文化を表現した「SHINJUKU NINJA LIVE SHOW」