韓国教育財団・碧夆奨学基金と私 第5回 全妙祥さん(南カリフォルニア大学MBA)

グルーバルな視点で仕事に邁進
日付: 2024年09月10日 11時58分

 韓国教育財団碧夆奨学生として南カリフォルニア大学MBA(経営学修士)を取得。帰国後、スマートニュースのコーポレート部門で、取締役会事務局や社内規定の整備など、ガバナンスのほか、内部統制に関わる幅広い業務を担当している。
日本と米国の拠点に在籍しているチームメンバーと連携し、グローバルにビジネス展開する会社の業務推進に邁進している。
幼いころは画家を夢見ていたが、高校時代に経済の知識を身に付けようと、キャリアデザインした。経済学部に進学し、金融を専攻。外国籍であることと、自身の専攻との親和性から手に職をつけるため、公認会計士の資格を取得する。大手監査法人を経て、コンサルティング会社でM&Aや事業計画策定などに従事。出向した日本政策投資銀行では複数のM&A案件の実務に携わった。
仕事は充実していた。会計やファイナンスの専門家としてのスキルも確立されつつあるという手ごたえもあった。しかし、もっと別の視点でキャリアを追求したいと思うようになる。
国内だけでなく、グローバルな視点で仕事をしようと、MBA取得のための留学を考える。実は大学在学中に、大学教授だった父親から「留学してはどうか」と提案されていた。しかし当時は就職氷河期といわれる就職難の時代だったため、すぐに仕事に就いた。
この決断について、「ビジネス英語を身に付けることがなかったため、グローバル案件を担当する機会がなく、仕事の幅が狭まった。留学しておけばよかった」とのちに後悔する。
四十歳を前に、「これが年齢的にもぎりぎり」との思いで、米国への留学を決める。費用は貯蓄でまかなえそうだったが、ギリギリだった。奨学金を取得できないものかと探し、韓国教育財団碧夆奨学基金に応募する。
通常は1年以上前から準備をするが、わずか半年で留学先を決めたため、奨学基金の最終面談も渡航前々日という慌ただしさだった。
支給決定の通知が届いたのは渡米後だった。「物価が高い米国で学資に余裕ができたことで、気持ちが楽になった」と感謝の思いを語る。
1年間のプログラムでは会社経営について総合的に学んだ。ビジネスコンサルティングについては、4人1チームで実際の企業に対し、戦略アドバイスを提供した。教授からリーダーに指名され、文化や考え方が異なるメンバー相手に授業だけでなく、課外活動でのパーティー開催なども行い、コミュニケーションスキルを磨く。
このときの経験は、「背景が異なる人と、臨機応変に柔軟に意思疎通を図り、仕事をしていく術を身に付けられた」とのちの仕事に役立っている。当時の仲間とは今でも連絡を取り合い「励みになっている」という。
1年間の履修期間を終えて帰国。会社組織を支える管理部門の業務に関心を持ち、管理人材を募集していたスマートニュースに入社する。「幅広い業務に従事し、新しい経験や学びにあふれている」と現在の仕事の充実ぶりを語る。今後について、「世の中の発展に寄与する起業家への会計・経営管理など、組織基盤構築支援にも挑戦したい」と思い描いている。
韓国教育財団に対して、「学資の心配をせず、気持ちにゆとりを持って幅広く学ぶことができた」と謝意を示す。
現在学んでいる碧夆奨学生に対しては「支援を受けて学んでいることを常に心に留めていてほしい。そうして発奮すれば、苦しくても頑張れる」と激励する。
碧夆奨学基金の意義について「能力と意欲があっても学資が足りずに諦める人は多い。在日韓国人として、韓日の懸け橋として貢献しようという気概を持つ人を支援する碧夆奨学基金はありがたく、得難いもの」と高く評価している。
これからの若い世代に「世界は広い。MBAでは世界のトップリーダー候補が切磋琢磨することで、より高め合うことができる。思い切って一歩踏み出してほしい」とエールを送った。

 全妙祥(チョン・ミョサン) 1980年生まれ。大阪市出身。在日韓国人3世。京都大学経済学部卒。在学中に公認会計士試験に合格。大手監査法人勤務後、大手コンサルティング会社で会計アドバイザーとして従事したのち、韓国教育財団碧〓奨学生として2020年南カリフォルニア大学MBA取得。帰国後の21年スマートニュース入社。


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