昨年12月に設立40周年を迎えた日韓文化交流基金は、今夏に多彩な参加型の青少年交流事業を展開。コロナ後、参加型イベント開催を本格化した。6日、来年の韓日国交正常化60周年を記念したプレ事業の一環として、都内でトークセッションを行った。
政治に影響されない両国関係を
港区の国際文化会館講堂で6日、公益財団法人「日韓文化交流基金」(鹿取克章理事長)の主催により、韓日国交正常化60周年のプレ事業としてトークセッション「日韓×わたしたち」と題した参加型イベントを開催。会場とオンライン合わせ約80人が参加した。
当日は、権容・一橋大学法学研究科准教授と、成川彩さん(韓国在住文化系ライター)の発表ならびに両者によるトークを行った。また現在、韓日の大学に留学中の伊藤晃輝さん(高麗大学政治外交学科)と、李叡琳さん(明治大学商学部)もパネリストとして加わり、登壇者4人と会場・オンラインを介し、参加者らと積極的な対話を繰り広げた。日韓文化交流基金の横山広子次長が司会を務めた。
■韓日親善のトレンド
権准教授と成川さんは、映画やドラマなどの韓流コンテンツについて、2002年の韓流ブームの前後から人気を博していると話す。往年のヒット作から、最近話題に上がることの多い「青い珊瑚礁」のカバーを披露したNewJeansの東京ドーム公演(今年6月)などのトレンド事情まで、韓流の台頭によって底上げされてきた両国の交流について伝えた。
登壇した4人は、韓日親善をめぐるトークセッションを活発に繰り広げた
一方で、留学中の2人は、留学を決意してからの周囲の反応や、現地で知り合った人々との交流について具体的に語った。
伊藤さんは、同じ政治案件を扱っていても、韓日で全く違う報道のされ方に違和感を覚えながら現地の友人たちと議論したとしている。留学に先立ち、日本の友人から「なぜ韓国に行くのか」という声を多く受けた半面、韓国でできた友人から日本人であることを理由に友人同士の輪から外されたことはなかったと正直な感想を話した。
李さんは、日本での留学中に出会った在日韓国留学生連合会で活動した思い出を語った。日本での就職を希望しているという李さんは、日本の小説の楽しさを韓国人に伝えられるようになりたいと話した。
フロアを交えた全体的な対話の場では、エンタメ情報の盛況さだけでは浮き彫りになりにくい、政治や歴史問題をめぐって関係性がきしむ両国の特徴や、今後の対策を巡って議論が白熱した。権准教授は、「エンタメだけでない文化情報を民間レベルで共有し、政権交代などに影響されない関係性を構築しておくことが重要だろう」と述べた。
■青少年交流の規模拡大
日韓文化交流基金は8月18~24日、50人の教育関係者からなる「日韓学術文化交流事業訪韓団」を韓国に派遣。また8月19~22日、「日韓みらいファクトリーフォーラム2024」が主要イベントとして、韓日の学生101人を集めて都内で合宿を開催。このイベントも日韓文化交流基金の助成事業として採択されたもの。フォーラムの事業運営責任者である寳積應公さん(筑波大学社会・国際学群社会学類)は、今回のトークセッションにも参加した。
鹿取克章・日韓文化交流基金理事長は「参加型イベントは今回が初めての試みであったが、登壇した若い2人が頑張って受け答えしてくれた。これからも参加者同士が発言し合える場を提供していきたい」としている。また、「今回は若い人たちからも、歴史問題などに対して積極的な発言がもらえた。来年は日韓国交正常化60周年にあたるので、今回の成果も踏まえ、さらなる企画を用意して記念の年を盛り上げたい」と話した。
訪韓団として派遣された日本の教員が韓国の学生と交流(日韓文化交流基金提供)