朝鮮大学の学生約50人らが北韓を訪問した。コロナウイルス以降、厳格な入国制限を行ってきた北韓が突然、祖国訪問団を受け入れた。韓国を敵対視する北韓だが、日本政府と急接近したシグナルと感じられる。
朝鮮大学の学生ら約50人が8月26日に羽田を出発、27日に経由地の中国・北京を経て平壌に到着した。
朝総連関係者など「在日」の北韓への団体訪問は、新型コロナウイルスの世界的流行に伴い、北側が非常防疫措置として国境を封鎖した2020年1月以降、中断されていたが、今回5年ぶりの訪問となった。渡北したのは朝大4年の学生たち。20年度に高校3年生だった学生たちは、朝鮮高級学校の卒業学年時に修学旅行として実施される祖国訪問がかなわなかった学年。北韓は今年に入りロシア人観光客などの受け入れを再び開始した。一方で、在日韓国人関係者の自由な訪問も認めていなかった。こういったなかで今回、「首領のための革命戦士」として養成される朝大生らに対して特別な配慮が講じられた。
朝鮮新報によると、北韓訪問前の8月24日には、朝大卒業学年祖国訪問団の結団式が朝大で行われた。韓東成学長や教職員、第1次訪問団として訪北する政治経済学部4年、教育学部教育学科4年、保育科、音楽科、美術科2年の学生らが参加した。
韓東成学長は、「朝鮮半島を取り巻く緊張した情勢下で、ましてや国を挙げて西北部の水害復旧に取り組む中で、朝大生を迎えてくれる祖国の格別な配慮は、総連の愛族愛国運動の担い手である朝大生に対して連綿と注がれる首領の愛情であり、期待の表れ」だと述べた。そして、「祖国の懐で一生懸命に学び、新たな決意を持って、戻ってきてほしい」と呼びかけたという。
これまでも朝大生の北韓訪問はあったが、主に修学旅行という形で実施されてきた。今回は朝大生の訪朝が11月末にかけて3回に分けて行われることも目を引く。
昨年12月、韓国を「交戦中の敵国」と宣言、さらにロシアと軍事同盟を結んだ金正恩に対する日本当局の柔軟な姿勢への対応とも捉えられる。日本政府は16年2月、「我が国独自の対北朝鮮措置について」と題する「制裁」措置を打ち出しており、この中で、「北朝鮮を渡航先とした再入国の原則禁止」の対象として「在日北朝鮮当局職員及び当該職員が行う当局職員としての活動を補佐する立場にある者」を挙げた。その「対象者を従来より拡大」するとし、訪朝した”在日朝鮮人”の再入国許可をより厳格化するという姿勢を取ってきた。北韓の度重なる”ミサイル実験”もあり、日本・北韓間の関係はさらに悪化した。そういったなかでの日本政府の今回の再入国許可は異例とも言える。
韓日米は、昨年の8月、「キャンプデービッド共同声明」で、韓半島においての北側の軍事挑発などへの共同対応を強調し、この共同声明の1周年の先月18日、改めて3国の共同対応を確認したばかりだ。日本当局は、来る11月の米大統領選挙後のワシントンの政策変更の可能性を想定して、韓半島・北側との関係を一部見直しているのだろうか。
急速に変わる国際秩序の中で日本と平壤との関係を韓国がどう捉えるか注視すべきだろう。