尹錫悦大統領は8月29日、ソウル龍山の大統領室で、2時間にわたり国政報告と記者会見を行った。同日、大統領は「使命」と「完遂」をキーワードに掲げ、任期内にも「4+1(年金・教育・労働・医療改革及び少子化対応)改革」を達成させると表明した。少数与党の国会で、2年8カ月という限られた任期の中、果たして改革を成し遂げることができるだろうか。
(ソウル=李民晧)
尹大統領は「改革が抵抗を招くのはやむを得ない。改革は険しい道のりとなるだろう。政治的な都合だけを考えれば、やらない方がラクだ。しかし私はそのような道を選ぶつもりはない。4大改革という国民との約束は必ず果たす」と語った。「国民から与えられた使命を果たす」という意志を込め、改革の完遂を強調した形だ。
改革すべき課題の中で注目を集めたのは国民年金の改革案だ。国民1人あたりの負担額について政府は、若年層は減額、高齢層は増額を検討している。尹大統領はこの日、国民年金の支給を国が保障し、保険料の引き上げ率も世代別に再設定することなどを骨子とした改革案を発表した。
「年金制度の抜本的な改革が必要だ。国が(年金の)支給を保障することも法律に明記しなければならない」としている。
国民年金の課題とされてきた「世代間の不公平性」を解消する案としては、現行9%の保険料率を13%に引き上げる場合、40代以上の中高年層は毎年1%ずつ4年にわたって引き上げ、20代の若年層は0・5%ずつ8年かけて引き上げることで若い世代の財政負担を減らす案が有力視されている。
しかし、国が国民年金の支給を保障する旨を法制化した場合、国家債務の増加は避けて通れない。加入者に支払う年金額から現在の積立額を差し引いた「未積立負債」が政府の負債へと変わるからだ。国の財政面に及ぼす影響は当面小さいものと見られる一方、負債が増加することによって韓国の対外信用度、国債金利などに悪影響を及ぼす可能性もある。
少子化対策を根本から見直し
尹大統領は医療改革への意気込みも示した。医療人材は、今から養成を始めても現場で働けるようになるまでには10年を要するため、早期の医療改革は必須であるとの認識を示した。(1)医師不足の解消と教育・研修の先進化(2)地域医療インフラの整備(3)医療関係者に対する公正な補償システムの確立など、具体的な対策案も提示した。その上で、「現在、医学部の増員問題は解消に向かっているため、今後は改革の本筋となる地域医療・必須医療の再生に政策を集中させる。2025年度における医学部の募集は順調に進んでいる」と評価した。
尹大統領は少子化問題について「過去20年間で数百兆ウォンの予算を投入したが、解決には至らなかった。今後も努力を継続していくことが重要だ」と強調した。
韓国は合計特殊出生率が0・7人にも満たない極めて深刻な状況に置かれている。これを重く見た政府は、7月に新設した大統領直属の少子化首席室を中心に、従来の少子化対策について抜本的な見直しを進めている。9月には「人口戦略企画部設立推進団」を発足させ、本格的なアクションプランを策定する計画だ。
|
|
8月29日、ソウル市龍山区の大統領室で記者会見を行う尹錫悦大統領(提供=大統領室)