文在寅政権下で継続して拡張財政が進められた結果、政府債務が拡大した。尹錫悦政権発足以降、債務削減を目指し緊縮財政へと舵を切ったが、来年度予算案もその流れを継続し、2024年度本予算比3・2%増の677兆4000億ウォンで編成された。
韓国政府は8月27日、25年度(1~12月)予算案を閣議決定した。予算案は9月上旬に国会に提出され、審査を経て12月に確定する。
25年度の歳出総額は24年度本予算比3・2%増の677兆4000億ウォン。過去最低を記録した24年度の増加率2・8%を上回ったが、増加幅は2年連続で3%前後にとどまった。
文在寅政権下では継続して拡張財政が進められ、政府予算案の歳出増加率は年7~9%台(18~22年)に上った。
尹錫悦政権は緊縮財政へと転換、その流れを来年も継続する形となった。尹錫悦政権3年間での予算増加率は12・1%増で、歴代政権のなかでもっとも小さい(財政統計が整備された05年以降)。
緊縮財政へと転換した要因の一つは国家債務の拡大。17年末に660兆2000億ウォンだった韓国の国家債務は、文在寅政権下で拡大、昨年末には1068兆8000億ウォンに達した。5年間で400兆ウォン以上、増加したことになる。昨年末には1126兆7000億ウォンと、初めてGDP比50%を超えた。1人当たりの国家債務は昨年末基準で2195万ウォンまで拡大している。
尹大統領は、「今後、高齢化により健康保険と年金支出を中心に財政運用に困難が予想される」と述べ「健全財政は現政権が3度の予算案を編成しつつ守ってきた大原則。財政事業全般の妥当性と効果を再検証し、計24兆ウォンの支出の構造調整を断行した」とし、「これによって節減された財源は、国がなすべきことに集中的に投入した。そして弱者に対する福祉基調は継続していく」と来年度予算案について説明した。
企画財政部は、25年度予算案について「国民生活」に重きを置いたとし、(1)弱者への福祉(2)経済活力(3)体質改善(4)安全な社会・中枢外交を掲げた。
福祉分野では基礎生活保障(生活保護)の関連予算を約1兆ウォン増額し、支給額を年間141万ウォン引き上げる。住居安定のため、14兆9000億ウォンを投じて過去最大規模の賃貸15万2000戸、分譲10万戸の公共住宅を供給する。育児休業中の給与の上限額を月150万ウォンから最大250万ウォンに引き上げ、事業主に対する代替人材支援金を増やすほか、育児休業業務分担支援金(月20万ウォン)を新設。
経済分野では韓国経済の基幹産業となった半導体事業への投資をさらに拡大するため、投資資金に対し4兆3000億ウォン規模の低金利融資を行う。
今後、マーケットが拡大するとみられる電気自動車(EV)事業へはバッテリー過充電を防ぐ「スマート制御充電器」を2万3000基から9万5000基へと拡充。人工知能(AI)によるディープフェイク(偽動画)の映像・音声分析予算も新規編成する。
近年、著しい成長を見せる原発、防衛産業、コンテンツに対しファンドを新設。有望な中小企業100社を選定して支援するプログラムを導入する。
国防予算は初めて60兆ウォンを超える規模で編成される。韓国初の国産超音速戦闘機「KF21」の量産に1兆1495億ウォンが投入され、レーザー対空兵器も712億ウォンを投じて量産を本格化させる。
研究・開発(R&D)予算は大幅に増額され、過去最大規模の29兆7000億ウォンで編成された。