東京測地系→世界測地系 韓国経済の現在地

自動車・原発・韓流コンテンツなど好調
日付: 2024年07月31日 05時27分

 今回は韓国経済の現状を、視点ごとに詳細に眺めてみたい。 

 [不動産市場について]
ソウルから始まった住宅価格の上昇期待心理が広範囲に広がる雰囲気となっている。来年上半期には、全国的に不動産景気回復の傾向がはっきりするとの見方まで出始めている。
韓国資産管理研究院では、「本年下半期にはソウルと首都圏でマンションの値上がり幅が大きくなるだろう。住宅のない人や住宅の買い替えを望む実需の住宅購入希望者にとって、今後の値上がりを考えると今が住宅購入の一つのタイミングではないか」との見方も示している。
 [自動車輸出について]
韓国政府・産業通商資源部が発表した今年6月の自動車産業動向によると、今年上半期(1~6月)の自動車輸出額は前年同期比3・8%増の370億1000万ドルとなり、過去最高を更新している。従来の上半期の最高記録は23年の356億5000万ドルであったが、その記録を1年で塗り替えている。
電気自動車(EV)の需要低迷、物価高による実質所得減少などの悪条件の中でハイブリッド車の需要が拡大し、北米への輸出が拡大したことで過去最高を更新したと分析されている。
 [原発ビジネスについて]
韓国では、ウル山で稼働中の新環原子力発電所3・4号機は、エネルギー安全保障と経済発展を牽引した核心エンジニアリングプロジェクトに挙げられている。韓国独自技術で完成した初の「韓国型原発」で、2007年に着工を始め、第3世代の新型原発では世界初で19年に商業運転に成功した。韓国を世界6番目の原発輸出国に飛躍させたアラブ首長国連邦(UAE)、バラカ原発がまさにこれである。こうしたことを背景に24兆ウォン規模のチェコの新規原子力発電所事業を受注したと発表している。原発の輸出としては韓国史上最大規模であり、09年のUAEバラカ原発受注以来、15年ぶりの大型案件となる。24兆ウォンにのぼる受注規模は、20兆ウォンだったバラカ原発の1・2倍に当たる。
韓国の「K原発」業界は文在寅政権の脱原発政策により稼働中の原発が止まり、建設中の原発も工事が中止されるなど業界は衰退の危機を迎えていたが、今回の受注で新たな跳躍へのステップが整ったと評価されている。
今回は世界第2位の原発大国であるフランスを、その「ホーム・グラウンド」とも言える欧州で破ったことに意義があるという声もある。
人工知能(AI)の利用拡大により世界的に電力需要が急増している状況で、K原発が中東に続いて欧州市場でも第一歩を踏み出すことに成功したと評価されている。
 [韓流ビジネスについて]
韓国では、金大中政権時代以降、産官学金融、国家を挙げて国際社会に対して韓国ビジネスの国際化に努めてきており、その顕著な成果として、「韓流ビジネス」と言うものまで生まれている。韓国では、その韓流の波を今後も全世界に拡大し、2030年ごろにKカルチャーのグローバル市場規模が今の2倍水準となる約200兆ウォンに迫るまで拡大していきたいとする見方が出ている。
動画共有プラットフォームであるティックトックとブランドコンサルティング会社であるカンタールが最近出した「ショートフォーム時代の韓流:短くて強力なコンテンツで勝負する」というタイトルの白書によると、Kカルチャーの市場規模は今年約760億ドルから30年に1430億ドル、韓国ウォンにして約198兆ウォン水準に達するとの見通しが示された。韓国文化を伝える各種ショートコンテンツ、韓国ドラマなどを見ると、韓国料理・ファッションなどにも関心が拡大し、「ハロー効果」が期待されると同白書は指摘している。全世界に拡大している韓流は、驚異的な文化的影響力で着実に成長し、グローバル産業に成長しているとの見方も示されている。
(愛知淑徳大学ビジネス学部ビジネス研究科教授 真田幸光)


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