大手ECサイトで精算遅延

被害規模は数千億㌆か
日付: 2024年07月31日 05時20分

 韓国は政府主導のもと、早くからインフラが整備され、ITを推進してきたデジタル大国だ。国民のインターネット利用率も100%近く、必然的にEC(電子商取引)市場の規模も大きい。オンラインショッピングが生活の一部となっており、衣料品や生活用品の購入をネットで済ませるという人も多い。そんななか、大手ECサイトで出店者への支払い遅延問題が発生した。

 

 世界的なECプラットフォームのキューテン(Qoo10)が運営するティモン(TMON)とウィメプ(We Make Price)でネットショップの出店者への支払いが遅れるという事態が生じ、オープンマーケットで活動する多くの事業者が資金難に追い込まれ、倒産への懸念が広がっている。
キューテンは韓国人起業家のク・ヨンベ氏が立ち上げたプラットフォーム(Gマーケット)。同ECサイトはeBayに売却したが、シンガポールでQoo10を創業。売却契約時の営業制限があることからティモンとウィメプなど別企業を買収し、韓国でECサイトを展開している。
ティモンとウィメプの韓国内での利用者数はECサイトのなかで4~5位を占める。6月の利用者数は869万人に達し、両社の月間取引額も1兆ウォンを超える。現在、ティモンとウィメプの代金精算遅延により、出店者が商品の引き渡しを拒否し、プラットフォームで決済を取り消すか、払い戻しを受けるよう消費者に要求するなどの事態に陥っている。現在まで出店者と消費者の被害規模は正確に把握できていない。
被害額が大きいと見られる旅行業界ではハナツアー、モードツアーなど主要旅行会社はすでにティモンとウィメプで販売していた旅行商品の掲載を中断。両旅行会社は未払いの代金を支払うよう内容証明を送った。ロッテ百貨店は7月19日にティモンとウィメプから撤退した。
KB国民銀行やSC第一銀行など主要銀行は、ティモンとウィメプに対する貸付商品の取り扱いを中断した。精算金の支払い遅延で貸付償還が不透明になっているからだ。
これに関連して公正取引委員会と金融監督院は7月25日、ウィメプとティモンに対する調査に着手した。代金返金義務違反など電子商取引法違反がなかったか調査するとともに、出店者に対する未精算代金と消費者返金取り消し現況を確認中だ。ティモンとウィメプ側が金融当局に提出した未精算代金は1600億~1700億ウォン水準だ。精算期限がきていない6月と7月分の販売代金まで考慮すれば、被害規模ははるかに大きくなる。金融当局は、精算が遅れている出店者の一時救済を図るために公的資金の投入の検討を始めた。カード会社を通じて被害規模が大きな場合や返金が急を要する消費者に対して優先的な返金を行うというものだ。同時に両社に対しては資金調達によって問題を解決するよう要請していく方針。
韓国ではEC業界に対して、精算、代金保管、使用などに関する法的規定がなく、「Eコマース規制の空白が招いた事態だ」という指摘も出ている。いまや、生活に欠かせないインフラとなったネット取引。成長速度が速いため、法の整備が追いつかずトラブルが起こったときに大きな損害が生じる危険性がある。さまざまなケースを考慮し早急な対策が必要だろう。


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