さる7月13日、暗殺未遂事件でトランプ候補の支持率が上昇する中、次期米大統領当選が確実視されている。ちなみに一部専門家の間では、トランプ氏が政権を握れば在韓米軍を撤収させる可能性が高まるだろうと言われている。韓国では一般国民の間でも、在韓米軍が近い将来に撤収するのではないかと懸念する声が上がっている。
しかし結論から言えば、在韓米軍の撤収はありえないと言える。韓半島の地政学的地位は大陸勢力を牽制する橋頭堡であり、米国にとっては戦略的要衝地だ。
米国が直面している最大の懸案である対中関係を考えると、韓米同盟と日米同盟は東アジアとインド太平洋の平和・安保を支える二輪の軸(linchpin)になっている。
トランプ氏が就任すれば、在韓米軍駐留費の増額を強要するための交渉手段として米軍撤収を交渉カードとして使うことはできる。しかし実際に在韓米軍を撤収するということはあり得ないと判断される。
最近、トランプ前大統領はタイム誌とのインタビューで「在韓米軍部隊を撤収するのか」という質問に「私は韓国が私たちをきちんと待遇することを願う」として在韓米軍駐留費用の大幅引き上げの必要性を強調した。
トランプ前大統領は「危険な位置に4万人の軍人がいるが、これは話にならない。なぜ私たちが他人を防御するのか? われわれは今、非常に豊かな国、韓国について話している」と言及した。トランプ氏が言及した在韓米軍の数は4万人ではなく、正確には2万8500人だ。
米国は2020年12月、議会の上院と下院で在韓米軍を2万8500人以下に減少することを禁止する国防授権法を過半数の賛成多数で通過させた。米議会は国防授権法を通じて、在韓米軍の兵力を最低2万2000人以下に減らすことを禁止したのだ。これより少なく在韓米軍の兵力を削減するためには、米国議会の承認を得なければならない。したがって次期、トランプ政権の在韓米軍完全撤収は事実上不可能だ。
タイム誌のインタビューを見極めると在韓米軍の撤収や削減が目標ではなく、それを交渉カードに在韓米軍防衛費負担金の大幅増額を得るという意図が隠れている。過去、米国政府は在韓米軍駐留に必要な費用は2兆ウォンであり、韓国と米国は半分ずつそれぞれ1兆ウォンを負担することで合意している。
ところが19年当時、トランプ政権は1兆389億ウォンの5倍を超える約50億ドル(約6兆ウォン)を韓国政府が在韓米軍防衛費として支払うべきだと要求した。したがって19年に韓米防衛費分担金交渉が決裂したことがある。
一方で21年、米国と日本政府は在日米軍駐留を支援するための日本の防衛費分担金を5年間で約92億ドル(1兆500億円)で合意している。
韓国の防衛費分担金は主に在韓米軍の軍事施設、弾薬、輸送、整備などの軍需支援費および在韓米軍が雇用した韓国人労働者の人件費として使われている。
在韓米軍の役割は、韓半島の安保だけでなく、米国の東アジアの核心利益を保護するための重要な存在だ。特に、在韓米軍の持続的駐留は、対中牽制の役割が何よりも大きい。
前回、本欄で筆者が述べた通り、トランプ前大統領は在任中、金正恩の親書を受け取り、快く米朝首脳会談の席に座った。その背景には、中国を包囲・牽制しようとする米国の外交路線に北韓が前向きに協力すると約束した可能性がうかがえる。つまり、米国の外交戦略である中国包囲・牽制路線に北韓が米国の味方になるという条件付きでCVID(完全核廃棄)政策の見直しを求めると駆け引きした可能性があったと推測される。
レーガン大統領が軍拡競争を通じて旧ソ連を崩壊させたように、トランプ大統領が再就任すれば、中国の分離独立、解体を目指し、中国に対する封じ込め外交路線を強化する可能性が高い。中国は14カ国と国境を接し周辺国に包囲されている。しかし、米国は世界80カ国と同盟・協調関係にある。米韓同盟と日米同盟は韓半島の安保を保つ二本柱であり東アジアの平和を維持する礎であることを再認識する。